Event Novels
□『クナーベンシーセン』
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「じゃあさ、本当は大佐って射撃苦手なんじゃねぇの?だから銃使わないとか?それだったら説明つくじゃん!いっつも指パッチンばっかだし…。
案外オレの方が上手かったりしてな!?」
大佐を真似してポーズを決めれば、少尉達は笑っているが何故かアル一人は焦っている。
「アルどした−−−」
「それは有り得ん話だな」
背後から聞こえた声に驚き振り返れば、そこにはいつの間に部屋に入ってきたのか大佐が立っていた。
「なっ!?い、いきなり気配消して人の背後に立ってんじゃねぇよ!ビックリすんじゃねぇか!!」
「兄さん……、さっきからずっと後ろに居たよ」
「アルフォンスの言う通りだ。今まで後ろに立っていたのに気付かないとはね。まぁ、君の低い視線では私の顔の位置の方が高すぎて見つけられんだろうが……」
「だぁ〜れが!視線が低すぎて見るもの全部巨大サイズに見える程のドチビだっ!!」
「そこまで言ってないよ兄さん……」
大佐に殴り掛からんばかりの勢いのオレを、アルが羽交い締めで引き止めていると
「それはいいとして……ハボック少尉」
「は、はいぃぃっ!!」
大佐はコソコソ逃げようとしていた少尉の肩を捕まえていた。
「上司の射撃の腕前をネタに賭とは、余程暇とみえるな」
「すっ、すいません!!って、なんで俺だけなんすか!?ブレダは!?」
ハボックは慌ててブレダの姿を探すが、既にブレダの姿は部屋にない。
(少尉、可哀相に消し炭決定だな。
因みに、ブレダ少尉なら探しても無駄だぞ。大佐の姿が見えた途端、素早く逃げたからな。
あぁ〜あ、首根っこ掴まれて……けど、ちょっと可哀相……かな?
面白がって聞いてたのはオレも同じだし……。
ここは一つ助け舟でも出すか…)
オレは、青い顔で両手を挙げている少尉と発火布を嵌めようとしている大佐の間に割って入った。
「でも、そう思われても仕方ないんじゃねぇの?」
「何がだ?」
少尉に向けていた手を下ろすと、大佐はオレに向き直る。
「アンタが銃を撃ってる姿を見たことないから、下手って思われても当然じゃねぇのかって言ってんの」
「私にはこれがあるから銃の必要がないだけだ」
そう言って大佐は自慢げに右手を見せた。
「だ〜か〜らっ!いつもそんなモンに頼ってっから下手なんじゃねぇかって部下に思われてんだぞ!」
「心外だな。私は錬金術がなくとも射撃の腕前は確かだとも」
「へぇ〜、自信あるんだ?」
「中尉やそこのハボックならまだしも、普段から銃を手にしていない鋼のに負ける気はしないな。大体、鋼のは銃の扱いは知っているのかね?」
癪に障る言い方をされ、オレは意趣返しのつもりで返したのに、逆に嫌味たっぷりで聞き返され、頭にきたオレは…
「それぐらい知ってる!弾を込めて、バレルの後端に備えたチェンバーに実包を装填。グリップで銃を持ち、サイトを用いて狙いを定め、撃発。
トリガーを引く、それによってハンマーが落ち、ファイヤリング・ピンを押し出してカートリッジ低部の雷管を叩く、発射。薬莢内の火薬が急速に燃焼ガスによって弾丸が押し出され、マズルから飛び出す。弾丸は対象物に向かう−−−だろ?」
「おぉ〜っ!ファルマン2号!!」
少尉、褒めてくれるのは嬉しいけど、そのネーミングは嬉しくねぇ。
*