Event Novels

□『クナーベンシーセン』
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「鋼の……よく的を見たまえ」

「なんだよ!勝負はついたじゃねぇか!ほらっ!アンタもよく見ろよ!!穴だって、ひと……つ、ひとつって…………え?うぇぇぇーーーッ!?」





素っ頓狂なオレの声が、練兵場中に響き渡った。



(だって……、だって、有り得ないだろ!?)




そう、的をよく見れば弾痕は確かに一つだけ。




だが、穴の大きさが1発の弾痕の大きさではない。



的の中心に当たった6発全てが同じ箇所を撃ち抜き、それが一つの大きな穴となっていた。



それに対してオレの弾痕は全て、的の中心に当たってはいるが位置はバラバラ…。



少尉曰く、オレはトリガーコントロールがまだまだで、照準がブレて正確ではないらしい。


それに比べて大佐は正確に撃っている為、ブレがないと言うが……




「だから言ったろ?鋼の“君に負ける気はしない”……とね?」




ムカつくぐらいの笑みを浮かべ今度は肩でなく、腰に手を回して大佐は歩き出した。




「え゙ぇえぇぇーッ!!」

「一日だけですよ、大佐。兄さんも無茶しちゃ駄目だからね〜」

「ありがとう、アルフォンス。物分かりの良い弟を持ってよかったな、鋼の。……それと、ハボック。後の指揮はお前に任せた」

「アルーーッ!兄ちゃんを助けようとは思わないのかぁ〜〜〜〜っ!!」

「僕は止めた方がいいって言ったのに、勝負するって聞かなかったのは兄さんじゃないか。今回は自業自得だから仕方ないんじゃない?」

「大佐も大概だけど、アルも案外冷たいよな…」

「そうですか?僕の場合人によりますよ」




そうあっさり言い放つアルフォンスを、絶対敵に回すまいと改めて認識したハボックだった。







−−−そして、次の日。





「くっそぉ〜〜〜!!っいでッ!!」

「あぁ、まだ大人しくしていなさい」




案の定、エドは朝から晩まで軍でこき使われ、夜は夜でヘトヘトに疲れているところを大佐の家に強制連行され、朝方までベッドの上で啼き続ける羽目になった。



翌日、目を覚ましたエドはやはりベッドから起き上がる事ができず、大佐に甲斐甲斐しく世話を焼かれ、改めて30代の体力の凄さに完全に敗北を感じたのであった。



*
『クナーベンシーセン』

スイスで9月に行われる“子供射撃大会”


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□補足

今回、専門用語が無駄に多い為、意味を付け足しておきます。

バレル→銃身、チェンバー→薬室、グリップ→銃把、サイト→照準器、トリガー→引き金、カートリッジ→弾薬、マズル→銃口。

そして、ロイがエドに見せたラピッドファイヤとは、トリガーを引ききったまま、フォアグリップまたレバーを前後に動かして、弾を連続的に発射することをいいます。



ここまで飽きずに読んで頂いた方、本当に有難うございます。



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