Event Novels
□『Sweet Chocolate』
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「なぁ、少尉だったら何貰えたら嬉しい?」
「俺、ねぇ…」
チラリと横に座るエドの顔を見る。
「な、なに?」
(これ、本気で答えた方がいのか?
冗談で頭にリボンでも付けて「私を食べて☆」とか言ってみろって言ったら、エドの奴マジでやるつもりか?まぁ、それはそれで大佐は喜ぶだろうけど……)
「んー」
「じゃあ、チョコだったら?オレだったらどんだけ甘くても平気なんだけど、やっぱ大佐だったらビターとかの方がいいのかな?ちょっと苦みがある方がいいのか?
それともホワイトチョコとか?」
(苦いね……、大佐ならどんだけマズイチョコでもエドからだったら
「最高に美味しいよ」
なぁ〜んて、爽やかな笑み浮かべて言うんだろうな…)
「やっぱ自分で作った方がいいのかな?でも、オレ作ったことないし……どうしたらいいと思う?」
矢継ぎ早に聞いてくるエドを尻目に俺の頭の中では、どんな事をしても喜ぶ大佐の顔が浮かんでくる。
「少尉、聞いてる?」
(……そういや、昔のアイドル歌であったな?
♪あなたにあげてみても目立ちはしないから――とかなんとか……、あれ最後どんなんだったけ)
「なぁ〜、少尉ってば」
エドが服を掴んで揺さぶるが、俺の頭の中ではアイドルが振り付きで踊っている真っ最中。
(♪ふふふふ〜ん……、大人の味ねぇ―――)
頭の中で、アイドルがサビを歌ったところで俺は閃いた。
「エド、名案が浮かんだぞ!」
「マジで!なに!」
「あのな…」
手招きし、コソコソと耳打ちする。
「どうだ?これなら高いチョコじゃなくても、その辺に売ってるようなヤツでいい。しかも、これは誰も真似できない。
お前だけが出来る。そうだろ?」
「それってさ……、少尉の願望じゃねぇの?それ本当に大佐が喜んでくれるのか?」
折角の名案なのにエドは俺を白い目で見るが、俺には自信があった。
「まぁ、俺の願望も少しは入ってるかもしれないけど―――」
「入ってんのかよ」
胡散臭い眼差しを向けるエドの肩を叩き、俺は断言する。
「絶対に喜ぶ!」
「本当かよ……」
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―そして、2月14日。
案の定、スィーツ専門店や洋菓子店には、我先にと限定物や綺麗にラッピングされたチョコレートを買い求める女性達で賑わっていた。
そんな様子を横目にオレは一人、馴染みの雑貨屋の扉を開いた。
賑やかな洋菓子店とは打って変わり、雑貨屋の中はいつもとなんら変わりはない。
けど、今日が2月14日という事もあってか、普段は置いていないようなリボンの掛かった小さな箱が幾つか目の付く所に置かれていた。
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