ネオロマ二次創作
□【遙かなる時空の中で】
『小さな嫉妬』あかね×イノリ
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「大変! ちょっと遅くなっちゃった」
抜けるような青空の下を全速力で走る。
今日はイノリくんが教えてくれた秘密の場所で待ち合わせ。そこにある大きな木の下で会おうって約束したんだよね。
早足で町の人込みをすり抜ける。細い道へ入ると、また全速力で走り出した。
「イノリくん怒ってるかな」
髪に挿した花を落とさないように押さえながら、眉間に皺を寄せてひたすら走った。そして約束の空き地へ着くと、恐る恐る中を覗く。空き地の中央には大きな木が見えた。
居ない……? イノリくん、帰っちゃったのかな……。
あたしは中央の大木まで歩いていく。近くまで来た所で、木の根元辺りに何かが見えることに気が付いた。それはあたしが居る位置からでは見えにくくて、反対側に回り込まなければいけないみたい。あたしは大木までたどり着くと、ぐるりと向こう側へ回った。
すると、そこにはイノリくんが気持ち良さそうに寝転んで寝息を立てていた。
穏やかな風が、彼の炎のように真っ赤な髪を優しく揺らしている。
胸の奥が微かに騒ぎ出した。
あたしは息を整えながら、眠っているイノリくんの隣に腰を下ろした。