戦国BASARA夢小説[馨×佐助]

□第1話:朧月夜
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「母上………」

「強く生きなさい
どんなことがあっても、生きることを忘れてはいけません
そうすれば、あなたにもきっと素敵な出会いがあるでしょうから」

馨が甲斐の城下町の遊廓に売られる前のことだった…



「朧月夜!!
洗濯手伝って!!」

「は〜い、今行きま〜す!!」

遊廓の昼は家事に専念する。
朝から昼まで寝て、
昼からは開店までに掃除やら洗濯やらして、
そのあと準備。
そして、夕方の開店から朝まで仕事。
これが遊女たちの一日だ。

給料は人気順。
朧月夜は先輩を差し置いて一番の人気を誇る、
甲斐でも屈指の美女だ。

「朧月夜のお姉ちゃんだぁ」

「おっ、千じゃない
どうしたの?」

城下町の子供たちにも人気があって、
こうして子供たちが訪ねてくるのは日常茶飯事だ。

「見て見て!!
かずくんにつくってもらったの〜」

ニコニコと大事そうに抱えるそれは…

「花の冠ね
きれいだわ
千によく似合ってる」

「ほんと?
お姉ちゃんにいってもらえたなら、だいじょうぶだね」

馨のセンスはピカイチで、
お洒落だということでも有名だ。
馨のお墨付きは絶対大丈夫ということにもなる。

「お姫様みたいじゃない
素敵よ」

「あたしね〜
おおきくなったら朧月夜のお姉ちゃんみたいになりたいの〜」

馨はちょっと複雑だ。

「わたしみたいに?」

「うん
美人でかっこよくて、何でもできちゃうの
モテモテになって、かずくんにやきもちやかせるの」

子供のこういう純粋さは本当にかわいいと思う。
この子もいづれ現実を知り、
この澄んだ目が見れなくなるんだろうなと思うと、
少し悲しくなる。
馨は今16歳。
遊女になったのは14の時だ。
こんな風な人生を送ってほしくない。

(千たちは、遊女の仕事がどのようなものなのか知らないからね)

「そうなの?
じゃあ、いっぱいお勉強して、いっぱいご飯食べて、
いっぱい寝ないとね」

「うん!!」

千は大きくうなずいた。




夜―

今晩もまた、馨の身体を求めて
大金持ちのオジサンがやってくる。

「朧月夜………
今日も優しくするからね」

「あら、この前もそう言って、
乱暴だったじゃない?」

「ははは
いや〜君の美しさは罪だねぇ」

意味不明。

(ほんとこのオジサン、すっごい気持ち悪い
このハゲオヤジ)

馨の心の中はかなり毒舌。
しかし、鼻息が荒い。
口づけをせむと顔を近づけてきたそのとき。

「ちょっとごめんねぇ」

いきなり迷彩柄の服を着た男が窓から入ってきた。

「なっ、ちょっと君!!」

それとは裏腹に、馨は安心した。
少しため息をつく。

「お邪魔な感じ?
すぐ出て行くからちょっとだけ」

馨ははだけた着物を着直し、オヤジと男のやり取りを冷静に観察している。

「貴様、ここがどこだかわかって!?」

「遊廓っしょ?
悪いねぇ」

オヤジは刀を抜き、男に襲いかかろうとする。

「危ないじゃん」

男は余裕の笑みで刀を避け、もて遊んでいる。

「くっそぉ!!」

オヤジは刺すのを失敗して、馨の方に刀ごと突っ込んでくる。

「危ない!!」

男がそう叫んで、馨を守ろうとしたが…

(間に合わない!!)

ところが………


「きもいんだよ、クソオヤジ!!」

馨はそう言って、刀の柄をつかみ、オヤジのアソコに蹴りを入れる。
オヤジはもちろん悶絶。
そしてとどめにみぞおちを蹴られ、気絶した。

「ハゲオヤジ、うっとうしいんだよ」

傍らで見ていた男は茫然、後爆笑。

「最高じゃん!!」

腹を抱えて、転げ回っている。

「あなたが入ってきてくれて助かったわ
このオヤジ、ウザかったの」

馨は自分もおかしくなって、爆笑し出す。

「見た!?
こいつの顔!!」

「うん、バッチリ」

「ほんと情けない面してたわよね!?」

二人して爆笑の渦。
しばらくして、だんだん落ち着いてきた。
お互いの顔を見て、微笑む。

「あんた、おもしろいね
名前は?」

「紅月馨よ」

「馨か〜
俺は猿飛佐助
よろしく」

「よろしく」

佐助は改めて馨を見る。

(ほんと美人だなぁ)

炎のような人。
それが第一印象だった。

馨は佐助に見つめられて少々面食らったが、
こちらも改めて見直す。

「忍びなの?」

急に聞かれて、佐助ははっと我に返る。
どうやら見惚れていたらしい。

(見惚れる?
この俺様が!?)

自分に驚きつつも答える。

「まあね
そういう馨も、体術やってるじゃん」

「わたしは武家の出身だから」

馨は少し苦笑いする。
表情からなんとなく事情を察知した佐助は、
それ以上聞かないことにした。
でもここを離れがたいのはなぜだろう。

「仕事中だったんじゃないの?」

「っと、いけね
んじゃ、俺行くわ
この埋め合わせは絶対するから」

「約束よ?
わたしが怒られることは間違いないんだから」

「わかってるって」

佐助はそう言って去って行った。

(嵐のようにやってきて、そうして去るのね)

馨の心に、猿飛佐助という男が刻まれたのだった…

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