戦国BASARA夢小説[馨×佐助]

□第2話:この街は…
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ここらでは子さらいはしょっちゅう出没する
馨は子さらい退治のヒーローだった

「皐月を返しなさい!!」

子さらいを追いかけている馨は大して珍しくなかった

「おじさん‼
箒貸して‼」

「はいよ
お譲ちゃん」

「ありがとう‼」

町の人も協力してくれる
おじさんから箒を受け取り、猛ダッシュする

「返しなさいって言ってんのよ‼」

そして子さらいに飛んで箒でみね打ち
気絶して倒れるところで皐月をキャッチ
見事な一連の動作である
おお〜と町の人の歓声が上がる

「皐月、大丈夫?」

馨はしゃがんで、皐月の顔を心配そうに覗き込む

「うん
お姉ちゃんが助けてくれたから
でも…………」

ヒクヒクと泣き出した皐月をそっと撫でる

「怖かったわよね
もう大丈夫よ」

「うん」

そうして今回のことも無事に収まりかけていたと思っていたのに…
今更になって、子さらい犯人のボスが馨を探していたのである
馨はみんなに迷惑はかけまいと呼び出されたところに向かったのであった





「お呼びかしら」

手を腰に当てめんどくさそうに言う
その態度が敵を挑発したのか、易々とボスが現れた

「てめぇか
俺様の子分たちをコテンパンにしてくれてるってぇのは」

「そうみたいね
って今更じゃない?」

馨独特の妖艶な笑み
誰もを虜にしてしまうという笑みだ
しかし、この男には通用しなかったのは言うまでもない
完全に男は頭に血が上っていた
馬鹿にされているとわかったからだ

「この女(あま)ぁ‼」

男は馨に殴りかかったが、難なく避けられる
馨にとってこんなことは朝飯前だった

「男のくせに、弱いのね
最近知り合った男とは大違いだわ」

なんてちょっと佐助のことを思い出す
あれから会ってはいないが、やけに印象に残っている男だった

「くそぉ‼
野郎共‼
この女をボコボコにしろ‼」

すると茂みの中に隠れていた子分たちが木の棒やらを持って現れた
いるのは分かっていたが、いざ対峙すると怖いものである

(挑発しすぎちゃったかしらね)

そう思っているとさっそく一人がかかってきた

「職業上、ボコボコは困るのよ‼」

とその男を背負い投げ
男顔負けの力に子分達はちょっぴり怯むが、次々とかかってくる
馨も次々と倒していくが

(こんな屈強な男たち、私じゃ身軽すぎるわ‼)

という問題が浮上してきた
確かにこの男たちは鍛えられていて、筋肉モリモリだった

「くっ」

馨の顔にパンチがクリーンヒットした
そこから形勢は逆転してしまい、馨はあちこちを殴られる

(無理…………)

なんとか体勢を立て直そうとするも人数が多すぎた

「おっと、卑怯なんじゃないの〜?」

すると突然かなり場違いな呑気な声がした

(この声は間違いない)

予想通り、迷彩柄男・佐助が立っていた
みな佐助のほうを振り向く
馨を掴んでいた手が離れ、馨は立てずに倒れる

「誰だぁ?」

佐助は甲賀手裏剣を持ち、崩した態度でこう言った

「誰かぁ
お前らに言う義理はないね
だいたい言ったってわかんないっしょ?
それより…」

佐助の目が鋭くなる

「その娘(こ)を返してもらうぜ」

男たちはかなり怯んだ
が、親分は無謀にもこう言ってしまった

「ひ、怯むな‼
かかれぇ‼」

男たちが撃沈するのに湯が沸く時間もかからなかった





「大丈夫?」

佐助は馨を支える

「バカ…………」

佐助をキッと睨む
かなり弱々しかったが

「バカはどっちだよ
そんな顔して…」

馨の顔はくしゃくしゃに歪んでいた
今にも泣き出しそうな、でも泣くもんかといった表情だった
泣いてなんかいられない
馨はこの花街でそう学んだ
こんなことは日常茶飯事で、子さらいなんて序の口だ
荒らしも来るし強盗だっている
でも追い払わないと生きていけない
だから馨は『退治』をするようになった
みんなが幸せに暮らせる街であってほしい
そう思ったから、泣き言なんか言わないし、馨は戦い続ける

「無理すんなよ」

佐助に頭を優しくぽんぽんとされて、涙腺が一気に緩む

「優しくしないでよぉ」

馨の精いっぱいの強がりだった
緩んだ涙腺は元には戻らず、次から次へと涙がこぼれる
佐助はどこまでも優しかった
馨の頭を自分の胸に寄せ、優しく撫でる
佐助はなんとなく今回のことだけが馨を泣かせたわけではないことを察していた
それは単なるきっかけに過ぎない
もっと奥深くに眠る何かがある気がした

(疲れてるんだな)

こんなことがないと泣けないぐらい彼女は自分に厳しいから、きっと全部自分に溜めこんだまま…
昔出会った美しい友人を思い出す
彼もまた、全部自分で抱えたまま甲賀を出て行ってしまった
自分は何もしてやれなかった

(櫂…………)

それもあって、佐助は馨を大事にしたかった
櫂と同じようにはしたくない
自分の無力を嘆くことも

「ごめん
もう大丈夫だから…………」

馨は佐助から離れ、目をこする

「怪我手当ついでに、いいとこ教えてやるよ」

「えっ?」

佐助はちょっとからかうように言う

「その顔じゃ、どうせ街に戻れないって言うんだろ?
付き合えよ」

馨は図星だったのでちょっとむきになった

「そうね
この前のこともあるし、付き合ってあげなくもないわ」

「素直じゃないねぇ
付き合ってちょうだいって甘えたらいいのに
まぁ、その顔はかわいいけど」

かんっぜんに遊ばれてる
馨の堪忍袋の緒が切れた

「甘えるか‼‼」

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