戦国BASARA夢小説[薔薇×半兵衛]

□第2話:薔薇姫の日常
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あれから数日が経った
あのあと半兵衛は側にいられると思った瞬間、薔薇からとんでもない命令を受けたのだ

「ここにいるからには、居候とはずうずうしの」

「そうだね
できることはなんでもするよ」

なんでもする、と言ったのが間違いだったのかもしれない

「なら、妾の世話係をするのじゃ
専属じゃぞ」

半兵衛の目は点になった

「何をすればいいの?」

「そのままじゃ
炊事、洗濯、掃除、妾の着物の着付けの手伝い、朝起こして夜は眠るまで側におる
他には…」

「待って!!
つまり、姫の側にずっといろ言うんだね」

とんでもない仕事の量である
でも悪くないかもと思ってしまった
自分はずっと側に置いてもらえるし、短時間でそこまで信頼してくれているということにもなる

「当り前じゃ
それが世話係というものであろ?
だいたい、ここの家人はただでさえ少ないのじゃ
休暇もなかなかやれぬ
というわけで、やつらに休暇を与える代わりにおぬしに頼むのじゃ
よいか?
へまをしたら許さぬぞ」

優しい人だと思った
家人を心配する主人なんてほとんどいないに等しいが…………
へまをしたら許さないと言っている割には言葉に棘はないし、追い出すつもりもないらしい

「わかった
早速だけどどうしよう」

「早速とはよい心がけじゃ
まずは家人に聞くとよい
それとお茶を持て」

半兵衛は微笑み、仕事に精を出そうと思ったのであった


が、しかしである
次の日から本格的に働き始めたのだが、この姫様は非常に厳しかった
食事にも味の指定があるらしく、塩味薄めのさっぱりしたのを好む
初めて料理なんて作ったけれど我ながらいい出来だった
でも第一声が「味が濃ゆいわ。次からはもっと薄くするのじゃぞ」だった
と言いつつも残さず食べてくれたので嬉しかったけど

洗濯や掃除は徹底的にやれとの仰せだった
「塵一つでも残すでないぞ。汚れも残すな。ただでさえここはボロ小屋なのじゃからな」

確かに見た目はかなりのボロ屋敷であった
子供たちが肝試しに来てはあまりの恐ろしさにすぐに帰ってしまうほど
それもそのはず、子供たちはここに人が住んでいるとは露とも思っていないので、灯りがついているのは幽霊の仕業と勘違いして帰って行くのだ
そんなわけで中だけでも綺麗にしておけというのが姫様の信条だったのだ

などなど、いろいろ注文をつけてくる姫様だった
起こす時間は指定されていて、午前中は稽古事、午後からは勉強と剣術だった
だいたいは全部に付き合わされる
なので睡眠時間が一気に減ったのは言うまでもなかった



(でも、平和だし、かなり充実してるよね)

手を動かしながらそんな事を思う
姫といると全力で付き合わなくちゃならない
半兵衛の心はここに来てだいぶ軽くなった
本音をぶつけ合うのも悪くはない
むしろ我慢するのが馬鹿馬鹿しくなってくる

「さて、姫、起きて」

半兵衛は掃除、朝食作りをしてから薔薇を起こす

「んっ、もうちょっとじゃ」

そう言って薔薇は布団にくるまった
半兵衛はクスッと笑った
毎朝こうである
かわいいなぁとは思うものの、容赦しないのが半兵衛だ

「だめだよ
今日は利休先生がいらっしゃるんでしょ?」

布団をばっとめくる
薔薇はふてくされて半兵衛に背を向ける

「ひどいぞ」

すると半兵衛はその美声で囁いた

「朝餉を抜きにしてもいいの?」

有無を言わさぬ声だった
薔薇は観念したように起き上がり、着物を取り出す

「向こうを向いているのだぞ」

と言い、もたもたと着換え出す(半兵衛は向こうを向いていない)

「なっ、見るなと言っておろう!!」

気付いた薔薇は照れながらプンプン怒る
半兵衛はやっぱりクスッと笑った

「だってね、姫ってそんなお年頃?」

「そんなお年頃じゃ
妾は12歳じゃ」

「12歳ね
しかも、一人で帯結べないでしょ?」

「うっ
ほ、放っておけ!!」

とか言いつつ、着物を羽織って帯を渡しに来る
この姫、とか言いつつが非常に多かった
つまりを言うと、素直じゃないということだ
でもそんなところがかわいくて、ついついからかってしまう


さて、着物を着せ終わってから朝食、そして今日の午前中は茶道のお稽古だった
かの有名な千利休に師事しているとは何ともうらやましい
でもわかるような気もした
隙のない身のこなしはこうやって作られていったのだろう
茶道を習うふるまい一つ一つを取っても、非常に美しく、優雅であでやかだった


「昼からはどうするの?」

稽古が終ってお昼時

「最近は医学の勉強をしておる
兵法書も漢文も古典も読みこなしてしまっての
他にもいろいろ読み終えたし…………」

驚いた
確かに教養はかなりあるなとは思っていたけれどここまでとは

「じゃあ、医学書を読んで、剣の稽古だね」

薔薇の手が一瞬ピクリと止まった
半兵衛がここに来てからというもの、剣で勝ったことが一回もないとはこれ如何に
半兵衛は大変強かった

「何なんじゃ
あのにょろにょろした剣は!!」

負けず嫌いな薔薇は、ひょろっこい身体をしているクセにと理不尽にも怒ったものだ

「仕方ないじゃないか!
あれは関節剣というれきっとした剣なんだから!」

ごもっとも
でも薔薇は怒っていた

「だからじゃ
なんというものを作り出してくれたのじゃ!!」

「僕のせい!?」

「そうじゃ
そういうことにしておかねば気が済まぬ!!」

めちゃくちゃである
ただ、半兵衛と稽古をすることで確実に強くなっていっていた
何やら、新武器も見た

「君だって、琴絃なんて武器にしているじゃないか!」

はじめて見た時は驚いた
身体が動かないと思ってよく見ると、絃が張り巡らされていた
『絃呪縛』と言うそうだ

「あれは前からじゃ!!
暇で編み出された」

「何それ!?
暇で出来ちゃったの!?
道理で琴がすごく上手なわけだと思ったよ!!」


「暇で悪かったの」

薔薇はプイッとそっぽを向いてしまった
それではっとする

(しまった
姫を傷つけるようなことを…………)

薔薇にとって暇は孤独と一緒だった
わかっているはずなのに言ってしまった
この無神経さは何とかならないかなぁと思う

「ごめんね、姫」

「………よい」

半兵衛はほっとした

「それより、おぬしが前よりも妾にずけずけものを言うようになったのはいい傾向じゃ」

ちょっとドキッとする
自分を見ててくれていることに喜びを感じる
薔薇は照れながらも続けた

「本音は大事じゃぞ」

そっぽを向いたままだから表情はわからないけれど…

「そうだね」

半兵衛も照れ笑いをした


こんな日々が続けばいいなぁと思うが、もうすぐ冬と春の季節の変わり目
自分の身体が弱いことを姫に知られたくはないなぁと思う半兵衛であった

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