戦国BASARA夢小説[櫂×いろいろ]

□第3話:運命の出会い
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数日の間、櫂はこの前田家で過ごした
利家やまつは優しくて、慶次とは年が近いのもあり意気投合した
慶次の使う一人称に影響されて、櫂も僕から俺と言うようになっていた

「慶次」

「ん?」

ここは屋敷の庭だ
今は日向ぼっこ中である

「利家さんもまつさんも素敵な人だね」

慶次は自慢げに言った

「いいだろ?」

「うん…………」

櫂の瞳には慶次に対する羨望が映っていた
ここ数日間というもの、櫂は家族の温かさを感じるのとともに、羨ましいという感情が大きくなっていった
でもそのことを絶対に表に出すことはなかった
だから慶次はその瞳に今までの櫂とは違うものを感じた

(櫂…………?)

なんだろう
すべてを胸の内に秘め、誰にも明かされることはない櫂の思い
どの人に対しても鋼より強度のある大きな壁を作る

「俺、そろそろ行くね」

「なんだよ突然…………」

櫂は目をつぶり、深呼吸した

「突然じゃないよ
ずっとここにいるつもりはなかったし、そろそろ苦情来てるでしょ?」

昨日から門の前には人だかりができていた
前田家に櫂が入っていくのを見たとある人が、櫂という存在が前田家を不吉にするのではないかとやってきたのだ
しかしまつと利家は応じなかった
そんなものはただの偏見でしかないと二人は考えていたからだ
ところが、その行為が民衆を逆に煽ってしまったのだ
次から次へと人がやってきて、門の前で抗議をしだした
慶次はそのことを知っていたから嘘だとは言えなかった

「たぶん俺は、どこに行っても同じだと思う
だって、金髪に青い目は『不吉な子』だから」

何を言ったって櫂は出ていくつもりなのだと、このとき悟った
ただその時の表情がとても寂しそうだったから、慶次は引き止めた

「行くなよ
どこに行っても同じなら、ここでいいじゃないか」

櫂は静かに首を振った

「信じてみたいんだ
どこかに俺を受け入れてくれる街があるって…」

櫂は信じることを諦めなかった
でもそんな街はあるわけないとも思っていた
この相反する二つの考えの中で櫂は葛藤しているのだと、慶次は知る

(だから旅を続けることにしたんだな…)

初めて慶次が、櫂の心の中を引き出した瞬間だった
次の日、櫂は屋敷から消えていた







一年が経って―
櫂は6歳になっていた
空白の間に奥州で片倉小十郎という神主の家の少年に会ったり、とても貧乏な暮らしをしていた毛利元就という少年に会ったり
なんだか色々行った気がする
日本全国津々浦々、出会いの旅をしていた
とはいっても、一年で行ける所なんて少ない
それに、櫂を受け入れてくれる街もなかった
そんな中で櫂は食糧不足もあり、かなり痩せ細っていた

(おなか減ったなぁ…………)

ここ2週間、なにも食していない
ボーっとしていると、見事な殺気を帯びた瞳と会う

(考え事してる場合じゃないじゃん!!)

すぐさま身の危険を感じた櫂は気配を消した
ちなみにここは森の中で、櫂は木と木の間を飛び回っていた
しかし、櫂は気配を殺しても光り輝く黄金の髪が目立つ
何やら飛んできてそのもののところに引き寄せられた

(甲賀手裏剣…
甲賀忍者?)

かなり粗末な身なりの少年だった
目に感情は宿していない

(傀儡暗殺人形…………)

櫂は甲賀についての基本知識は持っていた
忍術と共に伊賀では教えられる
伊賀忍者はスパイ仕事が主なのに対し、甲賀忍者は暗殺仕事が主だった
しかも小さい子供を洗脳して傀儡人形にしている村もあると聞く

(たぶん…………)

洗脳の犠牲者だ
一瞬の判断で櫂は身代わりの術を使い、少年の術から脱す
そして木の裏に隠れて不可視香を吸い、姿を消す
彼は櫂の姿を見失うも気配で追ってきた

(よくできてるよ〜)

だが櫂の武器は毒香水だ
かなりの広範囲に効くため遠距離攻撃に役立つ
その上、相手の速さにもよるが櫂は伊賀一の足の持ち主だ
スパイ仕事を主とする伊賀忍者は、見つかった時に素早く逃れるように足の速さを鍛える
つまり櫂の場合、日本一とは言えなくても五指に入る速さだった
ただ相手もかなり有能で、行動を先読みしようとする

(なんとか…………!!)

櫂は睡眠香を撒き、素早く後ろに退く
それを追って彼がそれの撒かれた範囲内に入り香を吸った
それでも意識があったので櫂は感心したものだ

(ひえ〜
最終手段だよ!!)

赤死香を手にし、蓋を開ける
赤死香は量を間違えると即死だ
少量なら麻酔薬になり、仮死状態を作れる

(あんまり使わないんだ
死んじゃっても知らないからね!!)

死んじゃったら困るが、櫂にも余裕というものがなかった
こんなに余裕がないのは初めてだ
そして赤死香を撒いたのだった






場所を移し、川のほとり
櫂はひょろひょろな体に鞭を打って少年を運んだ
幸い、赤死香はうまく作用し、少年は仮死状態となった

「切れたら大丈夫だよね…………」

解毒香を吸わせると、洗脳は解けないかもしれないので使わない
暇なので、川の水で自分の体を綺麗にする
着物も洗い、物干し竿を作って干した

「まつさんに着物の縫い方教えてもらっておいてよかった」

おまけに針と糸のセットを一式もらっちゃったりしたのである
綻びができたところをチクチクと縫った
櫂はかなり器用で、細かい作業は得意だった
まつも驚いていたものだ

「完璧…」

着物を広げ、縫い目を確かめた
小一時間ほどして、寒くなってきたなぁと思っている(服着てない)と、少年が目を覚ました

「あ……れ………?」

「起きた?」

少年は目を開けるとかなり痩せ細った金髪に蒼い目の美しい少年がいたので驚いた
何に驚いたかというと、櫂のそのギャップだった
美人なのにガリガリ
不思議なものだと思っていると、櫂が頬を叩いた

「生きてる〜?」

「いってぇ
何すんだよ」

「よかった
生きてる」

目の前にいる少年は心底安心したように笑った
で、次いで気付く

(なぜ裸?)

ふんどし一丁だ
よく見ると傍に着物が干してあった

(なるほどね
それにしても痩せすぎだろ
あばら浮いてるぜ?)

するとそのとき、櫂のおなかがギュルルルル〜と鳴った
櫂は恥ずかしくなってばっと顔を逸らした

「う、ごめん
ここ2週間、何も食べてなくって…………」

「いや…………」

気まずい
すると今度は猫が寄ってきた
ニャ〜と鳴いて、櫂にすり寄る

「ネコさんだぁ〜」

さっきの表情とは打って変わって、癒され顔になった
よく表情がクルクルと変わるやつだ
試しに言ってみよう

「それ食べたらいいじゃん」

はたまた豹変
今度はプンプンと怒りだした

「だめだよ
ネコさんはかわいいんだからね」

そう言ってすりすりやっている
どうやらネコ愛好者のようだ

「ところで、俺様はいったい…?」

「ん?
ああ、すっかり忘れてた」

すっかり忘れてただと?
大ボケ者か?
少年は怒りたくなったが抑えた
怒ったってしょうがない

「俺が無理やり眠らせて運んできたの」

無理やり眠らせて…
記憶がない
もしかして…

「人形状態の俺を眠らせたの?」

「うん」

彼はあっさりと答えたが、少年の驚きようといったらなかった
人形状態のときは極限状態まで身体能力が上がっている
その状態の自分を、彼はひょろひょろの身体で眠らせたのだ

(こいつやるな…………)

一見、能天気に見えるが相当の使い手のようだ

「強いね、君
俺、驚いちゃった」

しかも強いねで片づけた

「どこのどいつで誰なわけ?」

「伊賀忍者の弥勒櫂
服部半蔵の門下」

道理で強いはずだ
服部半蔵は自分に厳しく、他人にも厳しいと聞く
死ぬギリギリまで戦い抜けが信条だろう

「ふ〜ん」

「君は?」

「は?」

「君は甲賀でしょ?
名前、教えて?」

櫂はニコッと微笑んだ
やっぱり馬鹿だ
敵の忍者とわかっていて堂々と名乗るなんて

「俺は猿飛佐助」

「佐助か〜
よろしくね」

これが櫂と佐助の出会いだった
この出会いは後に櫂の運命を最悪へと転がす
そのことを二人はまだ知らなかった…

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