小説U

□神の名を騙る不届き者
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その知らせを聞いた時、思わず息を飲んだ。

「あのケイジが狙撃された」

帽子で顔の半分を覆っている“情報屋”は、感情のない声で伝えてきた。

深夜の港は不気味なほど静かだが、闇には慣れている。闇よりも男の言葉のほうが恐ろしいとアキラは思った。

「ケイジは監禁されていたんじゃないのか?」

「特命の仕事があったらしい」

「特命……」

あの狂った男なら出来る仕事だったのだろう。
自身が傷付くことも恐れず、自らの血に濡れて残骸の中で笑う姿を目撃したことがある。あの時は危うく殺されかけた。


あり得ないことだと思うが、考えを口にする。

「ターゲットに返り討ちにされたのか?」

「ターゲットは全員始末した」

どうやらケイジ好みのタフな仕事だったようだ。

「あの男をヤったのは、特命には無関係の第三者だ」

「始めから狙われていたのか!?」

目を見開く。

「恐らくな。上はこれから情報を流すだろうが、昔の誼(よしみ)で先に教えてやる」

男はトレンチコートの中から一枚の写真を取り出した。

そこには死神が描かれたカードが写っており、赤色で何か書いてあるが汚れによって上手く読み取れない。

「その変色した汚れはケイジの血だ。意識を失った奴の側に落ちていたらしい」

意図的に犯人が残したもの……?

「内容は分かるのか?」

問えば、男は口元を歪めた。

「“罪人たちには我ら死神が制裁を下す”」

「死神?」

「正体は分からないが怨恨だろう。ケイジの他に二名狙撃され、そいつらは地獄に落とされた。この死神とやらのカードを添えられてな」

「!」

くらりと目眩に襲われる。

長期の仕事に出掛けたカエデは無事だろうか。

なあ、カエデ。何かが動き出したらしい。

それを罪だか罰だか運命だか、何と呼ぶのかは知らないが。

多かれ少なかれ、俺達に影響を及ぼすだろう。




題/空想アリア
 

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