小説U

□死神の協奏曲
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今夜は星がよく見える。
橋の上から空を見上げ、この街に帰ってきたのだと実感する。

ろくに電波の届かない山奥まで仕事に出掛けていた。ポケットから取り出した携帯の着信履歴には、アキラの名前が連なる。

何かあったのだろうか?

『カエデか!?』

ボタンを押せば、すぐに反応が返ってくる。らしくもなく焦りを感じさせる声に、首を傾げた。

問いかけようとして、空気の異変に口を閉ざす。人間が近付いてくる。

闇の中からぼんやりと人間が姿を現す。僅かな電灯で確認出来た姿は若い女だった。
自分とそう変わらない年頃だろう。

顔を隠すように赤いハットを被り、赤いグローブを身に付け、黒い洋服を身に纏う。なかなか異様な出で立ちは印象に残る。

女が目の前を通過する。
隠れていない口元は赤いルージュが引かれ、口角が上がっていた。

「……」

去っていく背中を見つめながら、アキラの話に耳を傾ける。

ケイジが狙撃された、殺し屋が6人死傷した。

知らぬ間に何かが動き出していたようだ。

犯人の目撃証言もあるらしい。複数犯ということらしいが、

「赤いハットとグローブの女はいる?」

問えば、アキラは口を閉ざした。驚いていることが分かる。

「やっぱり」

あの女からは尋常じゃない血の匂いがしたのだ。


題/空想アリア
 

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