小説U
□夜の明けた空に
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吐く息が白い。
夜明けを迎えた空を見る。
橋の上から見るそれは、川に反射して美しい。
「またここにいたのか?」
そっと近付いてきたアキラは、持っていた煙草に火を点けた。その煙りもまた白い。
「そろそろ雪が降り始める」
ラジオで聴いた予報。
冬をより感じるあの白さ。
「雪は好きじゃないな」
「私も」
積もった白さに赤が混じる光景。どうも私達はあれが苦手だ。
「それでも殺るしかない」
「そう、そして、こうやって夜明けの空を迎えるの」
雪を染めるのも、夜明けを見るのも、何度繰り返したことか。
私達が死を迎えるまで、それは続く。
「終わりはいつのことか」
2人の白い息が空に消える。
題:ドルチェ