小説U
□血の雨が降り注ぐ
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ターゲットの名を聞いた時、血の雨が降ると思った。
職業・殺し屋
そこそこ名の通った同業者が相手となると、一筋縄ではいかないだろう。
殺し合え、という命令のようにすら感じた。
何通りもの策を考え、事に及んだのは数時間前。
予想通り血の雨が降り注ぎ、体が生臭さに包まれた。
「俺には結果が見えていたけどさ」
血を洗い流したアキラは乱暴に髪を拭いた。
「どうして?」
「名が通っているって言うのは、爪痕を残しているってことだろう? へまな奴だと分かっていた」
引っ掻いても自分の痕を残さない。それが私達に求められていること。
アキラの言うとおり、へまな殺し屋だった。
殺し合いにすらならない力だからこそ、消されたのだろう。
「落としてくる」
その血を浴びたままなんて耐えられる訳もなく、浴室へと向かった。
私達が消されていないということは……、
思い浮かんだ言葉に頭を振った。
題:ドルチェ