小説U

□地獄が見たいの?
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生き地獄。それを教えてくれたのは目の前の男だった。

お金をあげると呼び出せば、簡単に釣られてやって来た。
寂れた屋上であろうと、いつもこんな場所だったから警戒など無いのだろう。

躊躇う、なんて感情はなかった。

私から金を渡したことも、連絡を寄越したことも無かったのに、少しくらいは警戒して欲しかった。最期まで忠実であると信じていたとは笑えちゃう。

私を金としか見ていなかったオジサン。

封筒を差し出せば意識はそれにしか向かず、更なる要求をしてきた。


嗚呼、本当にこの人は……

「地獄が見たいの?」

生き地獄を知らない貴方には、本物の地獄を贈ってあげる。

最初で最後の心からの贈り物。





題:ドルチェ

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