小説U
□僕を呼ぶ声
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18になったばかりだと言う男の見た目は“少年”だった。顔立ちも体も未熟なもので、車椅子に座って生活をしていた。
「歩けない訳じゃないんだけど、すぐに疲れてしまうんだ」
体が弱くて困ると苦笑いを見せる。
男は洋館に住んでいるが、ここには人の気配がない。聞けば長く独り暮らしをしているらしい。
「ねえ、僕の名前を呼んで?」
「ジィーン」
「ふふ、名前を呼ばれるって良いね」
可愛らしい笑顔に「まいったな」と内心苦笑する。
未成年、幼い容姿、無邪気な性格。
依頼を断れば良かった。
彼はこの歳で大学院まで飛び級している天才児と聞いているし、どんなお痛をしたかも聞かされている。
まさかこんなにあどけないとは思わなかった。
「ジィーン」
名前を何度でも呼んでやろう。“苦手”という意識はあっても、仕事には差し支えない。
依頼された情報を引き出し終えれば……
ジィーン、君とはサヨナラだ。
題:ドルチェ