小説U

□あなたと私の秘密
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街の色は緑と赤。鈴の音や定番ソングも流れている。

点灯された巨大なツリーを見上げる。
こんな日でも私達は仕事で、血を見た後だった。

楽しげなカップルや家族に混じるのは不釣り合いだけれど、目の前のツリーに足を止めてしまった。

「カエデはクリスマスに興味がないものだと思ってた」

隣に立つ男は、ズレたマフラーを巻き直した。

「……興味はある。縁はないけど」

あれは私の知らない世界の行事だ。チキンやケーキ、サンタクロース、触れることのない物たち。

アキラは微笑んでから、私の手を引いた。向かう先にあるのはケーキ屋さん。

「今日はシャンパンとケーキを買って帰ろうか」

「どうして?」

わざわざ行列に並ぶ意味が理解できない。

「殺し屋がクリスマスイブを楽しんじゃいけない決まりなんてないから、さ」

「ふーん」

クリスマスの楽しさは理解できない。
でも、アキラの鼻歌に心が弾んだ気がした。

血塗れた私達にもクリスマスがやって来た。




題:ドルチェ

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