小説U
□腐った理性
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殺し屋なんてみんな腐っているけれど、ケイジという男は、ずば抜けて腐っていた。
「君達も犯罪者なのに、僕と一線を引きたがる。どうして?」
じゃらじゃらと鎖の音が響く。ケイジの腕は鎖で繋がれていた。
消すには惜しい、野放しにするには危険な人物。上層部はそう判断している。
何が気に入られたのか、俺もカエデもこの男の「お気に入り」だそうだ。
不気味を身に纏っていて、カエデは近寄りたがらない。
仕方なく1人で面会に来てやった。
ケイジは暗い部屋で保護されている。
「自分の胸に聞いてみろ」
煙草の煙りと一緒に言葉を吐き出す。
繋がれていなければ、こんなに悠長に話など出来ない。
「君達を殺したいと思うことはおかしいの?」
表面的には笑顔。しかし、心臓を射ぬくと思うくらいの眼力が向けられる。
命があれば奪うだけ。腐った理性に、誰もが怯える。
題:ドルチェ