小説V
□揺らぐ心の行き先は
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魚の買い出しに出ていた柾子は、裏門の前で踞る少年を見付けた。
歳は六つ、七つくらいだろうか?
視線の先には蛙が鳴いていた。興味深そうにしながらも、恐ろしいのか手を出したり引っ込めたりしている。
その光景は微笑ましたかったが、こんな場所にいるなんて迷子だろうか?
柾子は放っておくわけにもいかないと、声をかけた。
「こんにちは、僕のお名前は?」
目線を同じ高さにして怖がらせないように努めた。
少年は柾子を見ると瞬きを数回繰り返し、何も答えず蛙のほうに視線を返した。
警戒しているのか、人見知りなのか分からない。
まじまじと見て分かったが、誰かに似ている。同じような目を何処かで目にしている。
柾子はそれは誰だったか、この少年はどこからやって来たのかと、思案した。
「僕はどこから来たの?」
まだ日は明るいが、親が心配しているかもしれない。
柾子は何か発してくれないかと見守る。
「……」
「……」
蛙に夢中らしい。
視線は一点集中のままだ。
困ったものだと考える。
その時だった。
「宝、宝!?」
慌てていると分かる女性の声が耳に届いたのは。