小説V

□ごめんね、上手に愛してあげられなくて
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タイトル:終末アリス

征子は重い足取りで山を越えていた。この山を越えれば海が見え、故郷がある。
こんなに早く帰って来るつもりは無かった。帰って来れるのかすら分からなかったのに、足は家へと向かっている。良い状況ではない。
そのことが征子を不安にさせた。


帰郷が決まった日のことを振り返る。

椿乃と遭遇して以来、征子は上の空だった。いつも以上に失敗を繰り返し、誰の目からも覇気の無さは明らかだった。

「暫く休みなさい」

そう言い出したのは子鞠だった。優しく諭すように言われ、征子は申し訳なかった。
長屋には征子を含め三人の女中が働いている。数日くらいなら問題はないと女中仲間にまで勧められてしまう。

断り続けた征子だが、子鞠の一言に渋々頷くことになってしまう。

「また元気に笑って」

活発なところが取り柄と自覚する征子にとって、目の覚めるような言葉だった。
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