小説V
□愛という正義で(憎という悪儀で)人は人を殺す
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「会いにも来ない父親だというのに、椿乃さんはどうして僕達に固執するんだろう」
「彦助のように単純に出来ていないからだよ。愛人の子どもが自由になることを許さないって考えていそうだ」
「それも単純だと思うけど?」
「愛憎なんてそんなものだろう?」
「知らないよ」
志郎は「ごちそうさま」と言い、立ち上がる。
美味い飯も彦助の話では不味くなる。
参郎は志郎が残した漬物に箸をつける。食べ物は粗末に出来ない。
ポリポリと音が響く。
「本当の悪は誰なんだろうね…」
呟きは誰にも聞こえることがない。
Title by 終末アリス