小説V
□人は皆、生まれながらに仮面を被る事を知っている。
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子鞠はため息を吐く。
「お兄様たち、私は壱郎お兄様と話があるので失礼します」
自分が原因とは知らぬが、2人が冷戦状態であることを知っている子鞠は壱郎の元へと逃げることに決めた。実際、壱郎に呼ばれていた。
子鞠が足早に去った後、廊下に残された2人は睨みあった。
「俺は道化を演じるお前が気に食わない」
「俺も暴虐なあなたが気に入らない」
「ならば、殺してやろうか?」
「物騒なことを容易く口にするな」
ふんっと鼻を鳴らす治郎と、作り笑いの参郎。
暫し睨みあいは続いたが、折れたのは参郎だった。
「長居は無用。失礼しますよ」
参郎は「物騒な人で困ったものだ」と独り呟く。
手に入らないけれど、あの人の手に収まらないようにだけは邪魔をする。
自分も意地が悪いなと、参郎はへらへらと笑った。
Title by 終末アリス