DR!

□イノセントボイス
1ページ/2ページ

あの子がどんな風に
変貌して結末を辿るのか
興味があった…
だから仕掛けた…
人々が絡み愛憎するよう
その結末を見たら
人は素敵だ
俺は人を愛してるよと
いつもと変わらず薄い
何の思いもない言葉で
都会の群衆で出来た
陳腐な舞台はジ・エンド
また次のステージと
糸にかかる獲物を
探して上手く罠を仕掛ける
終わった事件にも人々にも
思い入れも愛着もない
はずだった…
帝人くん…
君が…俺が街を離れた間に
連れ去られて何度助けを
呼んだのかな?
抵抗した?それとも
自らの罪だと甘んじて
その仕打ちを受けた?
ねぇ…俺を見て前の様に
少し困った顔をして
臨也さん…って
呼んでくれないか?

折原臨也はガラス越しに
竜ヶ峰帝人の姿を見る
ほぼ全身が包帯で覆われ
人工呼吸機や脈拍 心音などを 表示する機械群の中
点滴のチューブがポツ…ポツ
落ち…身体にはまだ何箇所も
チューブが繋がれている
機械によって生かされている
意識の戻らない少年
ねぇ…帝人くん…
君はこれで生きてると
言えるのかい?
この先目覚めても君は
もう元の生活には戻れない

臨也は視界に入る
帝人の母親の疲労感を思い
一人内心呟いた
(一人息子をこんな身体に
されるなんて気の毒だよね…
でも養子縁組決まったなんて
早いんだなぁ…切り替え…
そうか…跡取りいないと
困るんだから仕方ないか)
臨也の視線は先は厳しい…
映るのは反射した自分の姿
誰が彼を壊したのか…
原因を生み出したのは誰?
俺だ…とギリッと唇の端を
噛めば口元から血が滲んだ

数ヶ月前臨也は
街をしばらく離れていた
最後に帝人を見たのは
一人の男の凶刃から
友人の紀田正臣と共に
園原杏里を庇おうとした姿
犯人はすぐに回りの
屈強な男達に
取り押さえられた為
紀田正臣や竜ヶ峰帝人にも
怪我はなくへなっと腰を
抜かした後照れたように
笑う笑み
(かわいいなぁ…今夜
都市伝説を作りあげた
ダラーズ創始者とは
思えないくらいにね)
彼は淡い想いを互いに
抱いているあの化け物と
恋を昇華させ日常に消えて
平凡な日々を送るのだ
その姿を思うと胸が痛んだ
(そうか…俺は
惹かれてたのか…)
利発ながら時に鈍感で
全体的にあどけない顔はまだ
子供のようでクルクルと
大きな蒼い瞳 小さな鼻や唇
柔らかい黒髪に短い眉
同年輩の少年達より小柄で
薄い身体は運動が苦手そう
どちらかといえば
理数系だから運動神経は
本人も必要としてないだろう
新しいタブレットや機器は
彼の興味を引かせるのに
最適で 嬉しそうに触り
操作方法をおとなしく聞いて
その頬や肌に触れたいと
欲を持ったのは気まぐれだと
その時は思いすごしたが
ずっと帝人の傍に
自分がいたかったのだ
初めてそう帝人に対して
想った時には既に遅く
「最期にいいもの
見れたかな?
お幸せにね」
三人の姿を見送り
誰にいうでなく呟いて
臨也は雑踏の中を歩く度
意識が朦朧としていく…
ああ…死ぬのは呆気ないな
こんなに簡単にくたばるとは
自分でも意外だったよ
妹二人や両親は大丈夫
自分一人居なくとも日常は
変わらず誰の上をも通り抜け
毎日が過ぎていく…
「けれど…せめて
この街とは離れた場所で…」
ヨロヨロと駅へ向かい
とにかくここから離れて
生を終えたかった
俺一人消えたって
情報屋が一匹消えた
ノミムシが一匹消えた
その程度のもんなんだよ
倒れて悲鳴の上がる中
臨也は譫言のように
「ここから遠くへ」
そう言い…
運びこまれた先から
手術を終え転送されたのは
山間の病院だった
空気は美味しく
都会の喧騒を忘れさせる
のどかな雰囲気…
そんな中待合室のテレビから
聞こえてきた公開捜査
…が行方不明になってから
二週間立ち…情報を…
(ああ…たまにいるんだよね
このパターンなら家出か?)
そう呑気に構えていた臨也は
次の瞬間衝撃を受けた
(帝人くん!)
公開されている私服は
良く遊びに着ていた
緑と白のジャージで
来良学園の制服に身を包んだ
竜ヶ峰帝人の姿が
テレビ画面に映されていた
…なお竜ヶ峰さんが不審な
バンに連れ込まれたなどの
目撃情報が複数
寄せられており何らかの
事件に巻き込まれたのでは…
テレビから流れる
アナウンサーの声が
やけに無機質で…
反射的に連絡したのは
新羅の元だった
「臨也!生きてたんだ〜」
呑気な声を帰す新羅に
臨也は逆に事件 時間 日にち
状況化などを問い尋ねた
「それが…ヤバいみたい
帝人くん どうも一部の
連中から落し前つけろなんて
学校帰りに絡まれたりしてた
みたいで…セルティも探して
いるんだけど」
「ありがとう また連絡する」 新羅へ礼を言って電話を切り 次に紀田正臣へ
電話を入れると
「俺も園原も帝人を
心当たり当たってんだけど
皆…知らないって
臨也さん あんたなら
情報つかんで…ねぇ!
帝人を助けてくれよ…
お願いします…」
罪歌も黄巾党も関連がない
ならダラーズ…もしくは
あの騒ぎを知った奴らの
「紀田くん…
ドタチン達は?」
紀田は彼らや帝人を知る者は
ほぼ動いてくれていると
涙声で言った
「青葉や六条なんかも…そう
分かった…俺はこれから
帰るから皆で帝人くんを
助けよう…ああ大丈夫
帝人くんは聡いからきっと
無事だよ…」
そう言い聞かせたのは
紀田にではなく自分にだ
何故か悪い予感しかせず
それが当たって欲しくないと
情報屋の勘が告げていた
電話を切り 退院手続きを
強引に取り金を払うと
1番早く街へ着く電車の
切符を取り臨也は街へ
戻り近い事務所で事件の
全容をまとめ 情報をかき集め
赤い瞳と端正な顔が歪んだ
最新情報に 行方不明少年
発見か? 意識不明 など
とにかく運ばれた病院を
カタカタカタとデータを
拾い 時に侵入して 病院で
帝人を臨也が見たのは
夕方5時前後…
腫れた顔…痣や傷だらけの肌
衣服は身に付けてなく
大きめのタオルが腰に巻かれ
真ん中から血が出ているのか
赤くタオルを染めた
(帝人くん…)
臨也は病院を後にした
するべき事がまだある
自分は知人でしかなく
ここから先は立ち入れない
運ばれた手術室の明かりが
夜明けを過ぎても赤いまま
警察から連絡を受け
駆け付けた両親が絶句する
ほどにあどけない少年は
腫れた肉塊に変わり果て
命すら尽きかけていた

カタカタカタ…カタカタカタ
臨也の指がキーボードを叩き
画像を見つけては
プリントして消していく
(ああ…くだらない奴ら
うん…潰してあげる…
許さない…許さない…)
ログを拾い…楽しい玩具を
見つけたように臨也は笑った
「ねぇ…一度だけ協力して
くれないかな…」
昔ながらの天敵に頭を初めて下げたのは翌日の昼過ぎ

それは隣の市の
廃倉庫で起きた火事
ぼやですんだのと
日頃たむろしてる連中が
非合法ドラッグを
使用していたので
小さなニュースで
またかと警察は思った
自販機や鉄骨が飛び
男が笑いながら火を付けた
彼らが語る中匿名で送られた
封筒を
開けた署員が先日の
行方不明少年監禁事件の
証拠と彼等が犯人な事に
気付くのはその日中間

真面目そうな少年が
某チームを創成した噂が
気にくわない…
噂で聞いた…
それが本当ならどんなやつか
そいつをボコれば
俺らすごくね?
そんな話から出た計画

お前の家族、友人達が
この写メのやつらみたく
酷い目に
合わされたくなければ
分かっているな…
数回目の脅迫で家族 友人と
その単語を出した時
「分かりました…放課後に」
震え声で少年は答えたので
放課後車に乗せ 廃倉庫で
殴る蹴るしていたが
途中誰かが肌の白さに
衣服を脱がせて組み敷いて
それまで何も言わない少年が
「いやだ!やめて」と
泣き喚き暴れるので
顔を殴り代わる代わる犯した
「…さん…助けて…」
泣き声が煩いので
顔や頭を床に打ち付け
おとなしくさせた
泣き喚いた罰に局部を
ナイフで切り取りその少年を
皆で見て笑いこけていたが
血が止まらない上少年の
反応がなくなり殺したと
思い車に乗せ少し離れた
ごみすて場に棄てた
ま…ダラーズ創始者って
話は噂って分かったよ
本当ならチーム消滅しても
創始者がこんな目に合う
以前に俺達がボコボコに
されてるもんな
ざわめきと笑い声
犯人達の供述に謝罪の
言葉は一切無かった

彼等はまだ知らない
有名企業重役や会長の
親 親族を巻き添えに
今まで明るみに出なかった
悪行と泣き寝入りした
被害者全員が提訴した事を
檻の中過ごし出てきても
常に監視対象で自由のない
人形として生きる羽目になる
という事を…
事件は過去の関連ニュースと
報道され…報道が
静かになるまで一年以上かかり
帝人が入院してから二年経つ
人工呼吸機は外され 薄い
胸板が浅く呼吸しているが
帝人の意識は戻らない…
脳内のダメージが激しく
知能は元には戻らない事は
医師がハッキリ宣言したのは
一年過ぎた頃…
全員があの腫れた顔や
状態に頷くしかなく
わずかに小さく残った
男性器には
もう生殖機能はない
帝人は一人息子だったから
入院早々両親は親戚間から
養子縁組を取る事を
泣く泣く決めた

「帝人くん…だから楽に
したげる…大丈夫俺も
すぐ行くよ…そしたらずっと
抱きしめてもう離さない」
看護師姿で紛れこんだ
臨也は眠る帝人の顔を見て
優しく優しく微笑んだ
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ