DR!

□イノセントボイス
2ページ/2ページ

「君にとってこれは
望んだ生じゃない…
機械で無理矢理生かされて
自分の意思すらもうない君を
酷いとすら俺は思うんだ
だから一人じゃないよう
俺も行くから…帝人くん」
愛しい…愛しい帝人くん
まるですぐに目覚めて
臨也さんおはようございます
なんてあのあどけない笑顔で
微笑んでくれそうなのに
もう君の記憶には俺はいない
もしかしたらご両親の事も
自分の事すら覚えて
ないだろうね…
世界は君が目覚めても
優しいものじゃないし
だから君も目覚めないんだね
一人フラフラと臨也は帝人の
頬に触れその小さな唇に
キスをした
「苦しいのはほんの少しだけ
だから我慢出来るね」
臨也は帝人の顔をもう一度
見つめた
「帝人くん好きだよ…
もっと早く言えばよかった」
右ポケットに忍ばせた
ナイフを取りだし 帝人の
胸に突き立てようとした時
「っ…ぁ…ぁ…ん」
呂律の回らない声にならない
吃音に近いそれが
「帝人…くん…?」
「ぁ…ぁ…ぁ…ん」
うっすら目を開けて
嬉しそうに無邪気な笑みを
帝人は浮かべていた
「帝人くん…」
涙が臨也の瞳から溢れ
カランとナイフが
力なく落ちる
「ぁ…ぁ…ぁ…ん」
ポタポタ落ちる涙が掛かる中
懸命に臨也の名前を呼ぶ
帝人に臨也は泣いた
そして初めて神という
存在に感謝した

「い…ざ…や…さん」
フニフニと臨也の胸に
顔を帝人は埋めている
「帝人くんもう一度
俺の名前呼んで」
プゥと頬を膨らませつつ
帝人はもう一度
臨也の名前を呼んだ
「い…ざ…や…さん…
ぼく…おなか…すいた…」
結局帝人の記憶はほぼ
戻らず、臨也に
引き取られる事になった
新しいご家族と馴染むには
大変でしょうからと
表家業の口調で帝人の両親を
信用させ折原帝人になった
帝人は目覚めた日の
記憶はない…
ただ…僕の大好きな
大好きな人が泣いてる
気がした…から名前
呼んであげなきゃって…
もっときちんと話せるように
なったらいいのに…
もどかしくて帝人はたまに
臨也に八つ当たりのように
クッションをパフパフと
本人的にはぶつけてるつもり
の後悲しくなって臨也の
胸で泣く…
きちんといっぱい話したい
なのに帝人の口はそんなに
早く動かず 脳の思考も
きっとトロイ…悔しい…
僕だって臨也さんみたいに
いっぱい大好きだよって
言いたいのに…
文字だってそんなに
書けない帝人が泣くのが
臨也は分かっているから
怒らない
「帝人くんが俺を大好きって
事はちゃんと伝わってるから
ゆっくりでいいんだ…
帝人くんの声が聞けて
笑顔が見れてそれだけで
幸せだからね」
そう笑みを浮かべて
頭を撫でられる心地好さ
「す…き…
い…ざ…や…さ…ん」
かわいい声だよと
言われた次の瞬間
唇を塞がれて帝人は
臨也の唇の暖かさを感じ
少し照れた
「ん…帝人くんおしっこ
そろそろ行ってからご飯
食べに行こうか!今日は
天気がいいしリハビリ
がわりの散歩にもいい」
「はーい…」
大きめのロングTシャツに
素足の帝人を
ベッドから降ろし
臨也は手を握り歩幅を
合わせてゆっくり歩く
「間に合わないようなら
抱っこしたげるから」
「う…ぅ…き…ら…い…」
臨也さんは
間に合うの分かってるから
僕をからかう…
本当に間に合わない時は
抱っこしてトイレに
連れて行ってくれるし
なんで分かっちゃうのかな?
僕の事何でも分かるみたいで
なのに臨也さん…僕…
それを口にするには
まだ恥ずかしいのと
どう言っていいのか分からず
帝人は顔を赤面させた
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ