S book 1
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「エースー?」
「………」
「ねぇ、エースってば」
「………」
ああ、駄目だ。さっきから一言も口をきいてくれなくなったエースの隣に座りこんでため息をつく。これがもう、面白いくらい喋らないのだ。ぶすっとした顔でソファに座り続けている。あたしが何を言っても全部無視。相当怒っているようだ。
「ねぇ、どうしたの?」
エースの顔を覗きこんでそう言えば、ちらりと見られたあと舌打ちされた。(ちょっ、傷つく!)そしてエースはため息をつくと、うるせえあっち行け、なんてそっぽを向いてしまう。ああ、もう!何なの一体!
「ちょっと!エース!」
「うわっ!」
いつまでも不機嫌なまま何も喋ってくれないエースに痺れを切らしたあたしはぐい、とエースのネックレスを掴んで引っぱった。そうすれば、無理矢理あたしの方を向かされたエースと目が合う。何怒ってんのよ、なんて顔を近づければ、エースはまた舌打ちした後、やっと口を開いた。
「マルコ」
「は?」
「マルコマルコマルコマルコ」
「…え?」
「何なんだよ、お前!」
ガシャン!エースの手が目の前のガラステーブルを叩く。そしてやっと口をきいてくれたかと思えば連呼されたあたしの所属する1番隊の隊長の名前。いや、意味分かんないんだけど!あたしは未だテーブルを叩き続けるエースを慌てて止める。(このままじゃ粉々になっちゃうよ!)そうすれば、きっ、とあたしを睨んだエース。
「何だよ、口を開けばマルコマルコマルコって!」
「は?な、なに。どうしたの?」
「お前部屋に来たかと思えばマルコの話ばっかしやがって!」
今お前の隣にいるのはおれだろ!そこまで言うとエースはぐい、とあたしを抱きしめる。…ああ、そういうことか。やっとエースが不機嫌な理由が分かったあたしは、緩む口元を必死に隠しながら、ごめんね、とエースの背中に腕を回した。
だからお前は俺のだろ!
(いやいや、愛されてるね、あたし)
(当たり前だろ、ばーか)
thanx Blow