ORIGINAL


□SHIFT
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「いらっしゃい」


「!!」




突然聞こえた声にはっと振り返ると、そこには1人の少年が立っていた。


「珍しいね。こんなとこにお客さんなんて。」



首をひねりながら、腕に抱いた黒猫に話しかけている。

かと思うと、ふっと自分の方を見た。



「なんで来たの?ここには見たとおりなぁ〜んにもないよ♪」



にかっと笑う。


思わずなにか答えようとするが……なにを話せばいいのかわからない………



「………」


「なぁんだ!ただの迷子なんだネ」



少年は何かを感じたようだ。

少しあきれたような顔をして、



「ま、いいや」



とあっさり切り捨てた。


「とりあえず面白そーだからサ、僕と遊んでこーよ。ここ、案内するから。ついてきて!」



少年の手からボテッと黒猫が落ちる。


さっきまで黒猫を抱えていた手で、少年は自分の腕を掴んできた。

なにか言おうとする前にぐいぐい引きずられるように引っ張られる。



「なんにもないけど、大丈夫。ここだって、どこまでもこんな真っ暗じゃないからネ。見てて」



少年がなんとなく空いた腕を出す。

ノブを回すように手をかえし、ぐっと中に引くと……



「!?」



突然あふれた日光に、思わず顔をおおう。



「あはは!!そんなにまぶしかった?じゃ、次からは気をつけるよ。とりあえず、いこー?」



逆光で影になった少年の姿が自分の腕をぐいぐい引く。


そのままよろけるように外へ出たその瞬間、足の裏にやっと懐かしい地面の感触がした。

見上げれば、大きく広がる青い空。目の前にあるのはピンクの……




ピンク?





「わぁ!風船くれるんだって!!もらっときなよ!!」



少年のはしゃぎ声に背中を押され、気がついたらピンクの巨大うさぎの手から風船を受け取っていた。


青い青い空に、赤く浮かぶ風船。



「うふふ。色違い。。」



少年はいかにも嬉しそうに笑うと、赤い風船に自分の青い風船を寄り添わせた。が、すぐに風船同士は離れ、少年が自分から遠ざかる。



「さ!!あそぼ!」



少年はあっさり風船を手放した。



「あ…」



なんで……



「遊ぶのにじゃまでしょう?ほら、はーやーくーーっ!!」



自分の手を、少年が無理やり開いて握りしめる。

赤い風船が手を離れて自由になった。



「さ、行こう?」



ひとりぼっちになった気がした。





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