愛の夢

□愛の夢−第2番−
10ページ/18ページ

「充君のオムライス作り直して貰ってるから
僕の先に食べなよ。」

オムライスを、充の前に置く。
微笑みながらも、一刻も早くオムライスを口に入れるように、強く願う。

「わっ悪いから大丈夫。」
「いいの、いいの。すぐに来るだろうし。」

そう言ってやっと、充が頷く。
早く、喰えよ。

「ホラ、冷めちゃうよ。早く食べな。ね?」

スプーンを差し出して促すと、充はやっと緩慢な動作でオムライスを口に運ぶ。

ぱくり。

もぐもぐと口を動かす姿を見て、俺は歓喜で震えた。
何度も、何度もオムライスを口に運ぶ。

そのうちに自分の分のオムライスも来て、ようやく食事にありつける。

今まで食べたどのオムライスより、おいしく感じた。
これから起こる事にすっかり酔いしれていた。

ふと、充を見る。
何も知らず一生懸命食べる姿に、俺は愛しさすら感じていた。

これで、ようやく雅彦は俺のところに戻ってくる。
お前は、もう二度と雅彦に会えない。

「口にソース付いてるよ。」

ねっとりと、ソースを指で取ると、充は、またたくまに顔を赤くさせ、硬直してしまう。

その反応に可笑しさが込上げてきて、思わず本気で笑ってしまう。

「どうしたの?触られたのが嫌だった?」

充は、すぐに頭を横に振っていたが、しばらくすると、ソファーに倒れこんでしまった。

ああ、やっと薬が効いたみたいだ。

俺は、眠り込んだ充を確認して、電話をかける。
お抱え運転手に迎えに着てもらう為に。

三度目の着信で出た大江は、普段、車をめったに使わない俺の行為に不信がっていた。

友達が具合を悪くしてると、嘘を付きすぐに向かえに来てもらう。

10分後、生真面目な大江は、神経質な面持で俺達の居るファミレスにやって着た。

しきりに病院を薦められるが、持病だから大丈夫だと嘘を付き、親の所有するマンションに向かう。

このマンションの一室は、高校卒業時に、親が俺たちに、それぞれくれる約束になっていた。

雅彦の部屋は808号室。
俺の部屋は、その隣の807号室。

車の後部座席に充を寝かせ、寝やすいように頭を膝の上に置いてやる。

なんで、そんな事までしてやる必要があるのか自分でも分からなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ