愛の夢

□愛の夢−第2番−
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憎い相手のはずなのに、俺の心は、どこか高揚していた。充の頭の重みを感じる自分の膝からは、甘い疼きすら感じてしまう。

いや、違う。
これは錯覚だ。
きっとそれは、復讐がこれから行える高揚感に違いない。

必死に自分を否定する。

そうじゃなきゃ、俺は充を……。

かぶりを振って、俺は、今行き着いた考えを否定する。

どうやら、相当舞い上がってるようだ


冷静にならなきゃ復讐は行えないと言うのに。

思わず触れてしまった充の髪の毛は、想像以上に柔らかく、無意識のうちに頭を撫でてしまう。

俺は何をやってるんだ。

これから復讐する相手に……。

混乱し始めた俺を見て、大江は柔らかく笑った。
「彰彦坊ちゃん。そのお友達を大切になさってるんですね。」

大江の問いかけに、俺は、

馬鹿なっ!そんな訳ない。
と心で反発する。

実際にそう言う訳にはいかず、曖昧に頷く。

大江はそれを見て更に、話し続ける。

「その子、雅彦坊ちゃんとも、仲が良いですよね。たまに雅彦坊っちゃんと、彼の家にお迎えに行く事があります。」

久しぶりに、俺が車を使って嬉しいのか、大江は、いつもより饒舌に話す。

その内容に俺の心は一気に氷点下に下がる。
何を血迷ってるんだ。
こいつは、俺から雅彦を奪った憎い敵じゃないか。

俺が冷静さを取り戻すと、車はマンションの車庫へと入って行った。

かなり豪華なこのマンションは、各フロアに個別の車庫がある。車用のエレベーターを使って部屋の階まで上がれて、比較的簡単に車と行き来が出来るので、車好きなお金持ちに人気のある物件だった。

車好きの父親が考案したとか、そう言う話だったと思う。

大江は、そんな父親のお気に入りだった。
昔は、カーレーサーだったらしい彼のドライビングテクニックに惚れて、現役中は、かなりの出資をしていた。
引退をしても、彼の技術を惜しんだ父親によって、我が家の専属運転手にされたと聞いている。
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