愛の夢
□愛の夢−第2番−
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「な……で…」
「ねぇ、充君。雅彦と別れてくれない?」
「…………。」
「まぁいいや、その内、うんって言ってもらうから。」
「おい、薬使うか?」
「ああ、そうだな。充君、今から気持ちよくなる薬使ってあげるね。そうしたら辛くないでしょ?何も分からなくしてあげるね。」
「い…や…ぁ」
充が、三人に密着され、ますます体を強張らせた。
これでいいんだ。
間違ってなんかいない…。
充を置いて家に帰ろうと思うと、携帯電話がちょうど鳴った。
着信の名前に俺の心は弾む。
「もしもし…。」
『充を返せ。』
「充くん?知らないよ…」
『嘘、つくなよ。お前のマンションに居るんだろ?大江に聞いた…。』
「大江か、おしゃべりだな…。」
俺は優越感で満たされた。
雅彦から電話が来るのですら久しぶりだった。
『充を早く返せ。』
「だから知らないって…確かに今日偶然出会って食事して、マンションまで連れて行ったけど、もう帰ったよ。」
『充は俺と付き合ってるんだ。邪魔するな。』
「そう…知らなかった。これから気をつけるよ。」
『一生会うな。』
プツッ…。
突然切られた携帯。
雅彦の言葉が木霊する。
「一生会うな、か…さて、どっちが会えなくなるのかな。」
俺は薄く笑うと、充の悲鳴が響き渡る部屋を後にした。