愛の夢
□愛の夢−第2番−
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復讐の機会は、思いの他早くやって来た。
俺のバイト先に、あいつが偶然にも現れる。
お互いびっくりした顔になり、俺は、すぐに復讐の絶好の機会だと悟った。
強引に昼食の約束を取る。
幸いにも、もうすぐ仕事を上がる時間だったので、残りの仕事を手早くこなし、あいつの元へと向かった。
あいつ、…山口充。
俺から雅彦を奪った男。
コンビニのガラス越しから見える。
あいつの後ろ姿。
透明なビニール傘を、くるくる回しながら、ぼんやりと雨空を見上げて居た。
雨雲が立ち込める灰色の空は、誰もが、眉を潜め、わずらわしく思うはずなのに、心なしか嬉しそうに見上げていた。
雨空が好きだなんて、なんて変わったヤツなんだろう。
優等生の仮面を被り、俺は充にいかにも親切な人間を装って、隣に並んだ。
「中で待っててくれたらよかったのに。」
苦笑しながら充を見ると、大きい目を更に大きくさせて、こちらを真っ直ぐに見つめてきた。
そわそわと落ち着かない様子は、まるで俺の前で緊張してるように見えた。
その姿を見ながらイライラとした。
充の今の様子は、どこか庇護欲をそそる。
そうやって、雅彦も誑かしたのか!
罵ってやりたい衝動に駆られる。
それでも「復讐」の二文字が頭を過ぎり、どうにか衝動を堪えて、俺はまた分厚い仮面を被った。
「すぐ、そこにさファミレスあるんだ。ドリンクバーもあるし居心地いいよ。そこにしない?」
「うん……」
「よかった。じゃ行こう。」
了解を取り付けて、すぐさま歩き出す。
その後ろを充が、慌てて追いかけた。
その必死な姿が、かなり滑稽で胸がすっとする。
少し気を良くした俺は、歩幅を緩めて、充にさりげなく合わせてやった。
優等生な笑顔も添えて。
充は嬉しそうに横に並んだ。
本当に、こいつは馬鹿だ。
今から何が起こるのかも分からず、のこのこと俺に付いてきやがって。
俺が選んだ場所は、駅前のファミレスだった。
この時間は閑散としてるので、これから俺が行う事にはもってこいの場所だった。
いつか実行する復讐の為に、何度も考えて選んだ場所。
決行は突然だったが、予め何度もシュミレーションしていたので、事はスムーズに進んでいく。