愛の夢

□-愛の夢-エレジー
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人間の記憶というものは、とても曖昧なのかもしれない。

毎日、毎日、同じ事を繰り返すと、感覚がだんだんとマヒしていき、思考が鈍くなっていくのだろう。

ただ、俺の場合は、どす黒い感情が、空から舞い降りる雪のごとく、しんしんと静かに積もっていくだけ…………。

ああ、本当に俺はこんな事を望んだのだろうか。







曖昧になっていく………


鏡に映るのは俺なのかアイツなのか、それすら分からなくなった………







毎朝、絶望を抱えながら隣で裸で眠っている充を見る。

昨日の情事の後が色濃く残る姿は、今は俺だけのもの。

でも、それは充が寝て起きると、瞬く間に泡のように消えていく。

俺がじっと見てると、充がゆっくりと瞼を開く。

「あれっ……ここ…どこ……確かファミレスで……」

もう何千回言ったのだろう。
そして、俺は、同じ数だけ、答える。

「ファミレスじゃない。お前は記憶障害なんだ。携帯の日付を見ろ。」

充は、何度も繰り返す。

あの月曜日を…何度も…何度も…何度も……。

俺のマンションに住むようになって2年が立った。

それでも、俺と充の関係は、あの月曜日で止まっている。

「えっ……あっ…そんな…」

携帯を見て充は怯えた顔をした。

「お前の日記読むか?」

これは、医者に進められたモノ。
記憶の無い者を少しでも安心させる為にあると良いらしい。

充の日記は、短い字で日付と時間入りで、その時に思った事を書いている。

俺は、その内容が恐くて見れない。
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