愛の夢
□-愛の夢-エレジー
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たぶん、充はアイツの事を書いてるのだろう。
「あの…その…」
充が言いたい事は分かる。
俺がどっちかって事を聞きたいのだろう。
「雅彦だ……」
今回は、充を彰彦になんか会わせてやんない。
「あっ…そっか…」
俯いた充にイライラする。
俺が、彰彦だと言った時は、あんなに眩しそうにこっちを見ていたのに……。
どす黒い感情が、また俺の心に積もる。
充を無理矢理酷く抱きたい。
どうせ、寝て起きれば忘れてる。
所在投げにベッドに座る充に、俺は噛み付くようなキスをした。
舌をいれ、口を無茶苦茶に吸い付くと、充は苦しそうに呻いた。
それだけしか充はしない。
俺を拒否ったり、嫌がったりは、けしてしない。
それは受け入れてるようで、違う。
そこに充の意思が無い。
2年前、あの男が急に充の側から離れたのは、とっくに気がついて居たのだと、今なら分かる。
このむなしい自慰行為を……。
それでも俺はやめられない。
未来を夢見て、わずかな希望に縋り、延々と繰り返している。
いつか、充の何かが変わり、俺を受け入れてくれるんじゃないか……。
何かが充に残ると信じて、ずっと充の側に居る。
彰彦は家業を継ぎ、彰彦の友人だったあの男は医者になった。
俺は、充の側に居る為、家で出来る仕事を選んだ。Webデザインは、意外と俺の性にあってるようで、最近は依頼も個人指名でもらえるようになった。
ピアニストも一時は考えたが、海外に行く事も増えるので、諦めた。
全ては、充の為……なのに俺は、優しくしてやりたいのに、充に酷い事しか出来ない。
こんな自分が心底嫌いだ。
どす黒い感情は、たやすく俺を支配して、充にぶつけてしまう。
充は悪くないはずなのに、せめてしまうのはなぜだろうか………。
何者からも守ってやりたいのに、俺はそれが出来ないでいる。