月の雫
□キサラ様からの頂き物
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開け放たれた縁側に座り桜月と土方は天上に浮かぶ月を愛でながら月見酒と洒落こんでいた。
秋も深まり幾分か風が寒く感じられるのは、ここが蝦夷と言われる北国だからだろうか。
身震いをした桜月の肩を抱き寄せ、土方は煌々と照らす月を見上げながら杯を仰いだ。
こうしてゆっくりと流れる時間が愛おしいなど昔の自分では考え付かない事だと思っていた彼の耳にクスクスと笑う声が聞こえてきた。
「なんだ?行き成り笑いだして」
「ふふ。なんでもないですよ。
ただ、思い出してしまって…」
「ん?」
「歳三くんと出会ったのも再会したのも、秋の月が綺麗な夜だったなぁって」
「…そう言えば、そうだな。…俺からしてみりゃ、再会までが長すぎて出会った時なんかあんまり覚えてねぇけどな」
「…それは酷い…。いいもん、あの時思った事を告白しようと思ったけど止めます」
ぴったりとくっついていた身体を僅かに離し、桜月はそっぽを向いてしまった。
「なんだ?気になる言い方じゃねぇか」
「………。…歳三くんが私と再会した時どう思った?」
「ああ?藪から棒だな。…そうだなぁ。
あんときは機嫌が悪かったからな…。だが、お前を見た瞬間それが吹き飛んだのは覚えてるぞ」
離れていた身体を再び引き戻し、桜月の顔を覗き込む。
「記憶にある姿と変わらなかったことに驚いたが、それよりもお前に出会えた事が嬉しかったな。
…だが、お前は俺と再会したっつーのに怯えやがって気落ちした」
「えっと…。だって、歳三くん変わっちゃってたから…」
「まあ、仕方ねえ。…十年と三年じゃ時間が違いすぎる」
「で、でも、あの後ちゃんと分かったじゃないですか!…って、もしかして、私も人の事言えないのかな…」
しょんぼりと肩を落とした桜月に、土方は苦笑いをこぼし優しい目つきで彼女を見下ろす。
「気付いただけ上出来だ。で、お前はどうなんだ?」
「は?…えっと…」
「俺だけじゃ公平じゃねぇだろ。話してみろ」
「…呆れないでね?」
視線をずらし僅かに言いにくそうに口籠っていたが、桜月は再会した時の事を思い出し、ふわりと微笑んだ。
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