Kupipi
□Kupipi
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今から約900年前、クピピ族と呼ばれる一族とクイクル族と呼ばれる一族があった。
本来ならば、双方は俗世から隔離され、静かで平和な日々を過ごしている。
何故隔離されなければならないのかと問えば、クピピは強力な属性術を持ち、クイクルは特異な召還術を持つと言われていたからである。
その双方の力が交われば、どちらかの一族が消滅すると恐れられていた。
しかしクイクルは自分達の力を試したいが為、クピピ側に無惨にも攻撃を仕掛けた。
クイクルの無差別な攻撃により、死者は増え、治安は悪くなり、双方は消滅寸前だった。
大きな戦いがあった。
― 魔妖対戦 ―
人々はこう呼び、戦いは長年の時を経ていた。
魔 妖 大 戦
長い間続いている戦いで、クイクルの野望を阻止しようとしていたクピピだが、彼らも当初の目的を忘れ、多くのモノを失っていることに気付く。
これ以上戦いを続けてはならないと、クピピの大将はクイクル側に終戦の話を持ちかけた。
無駄な戦いを止め、二度とこのような争い事が起きぬよう、互いの力を封印し、平和を取り戻そうと。
クイクルはこの要望に躊躇うことなく、快く受け入れた。
戦いは終わりを迎えた、平和が再び訪れたと誰もがそう思っていた。
クピピは属性の術、即ち本来の忍びとは違った特徴があった。
後に魔法と呼ばれる術を身につけていた。
水、火、闇、雷、地、風、能、光、陽、それぞれの術師の高位の人間が活躍していたのである。
クピピの大将の血筋は全ての属性を習得し、あらゆる方向で人員を纏められる力が携わっていた。
―― 年月が経ち、クピピの後継者が生まれた。
誰もが後継者の誕生を喜び、祝い、名を"ジン"と名付け、大切に育てられた。
しかし、後継者の二代目となる"ジン"には力が感じられなかった。
本来であれば、生まれた瞬間に力を感じるのだが、小さな幼子からはその力は感じられない。
人々は不安を感じ、誰もがジンへの期待をどう抱いて良いのか悩んでいた。
ジンの父親、一代目大将は大きな力を持っていた。
血筋から考えると、ジンの中には必ず何かが生まれる筈だと一代目は強く信じた。
一方クイクルは、呼び寄せの術により、多くの妖怪や怪物を呼び出すことが出来た。
後にこの能力は、召還術を名付けられる。
クイクルは沢山の妖怪と怪物を呼び出しては訓練をしていた。
・・・・封印した筈の、強力な力を使って。
「大将・・・!!クイクル達がもう直ぐ側まで来ております、このままでは・・・!!!」
「・・・何、だって?」
誰もが終戦を信じていたが、クイクルの考えは一枚上手であった。
あの時、互いに封印しようと約束し、クピピは許された一部の力を残し、完全に力を封印した。
次にクイクルも力を封印・・・・と見せかけ、完全には自分達の力を封印していなかった。
「完全にクイクル達に騙されていたと・・・いう事か・・・」
クイクルの裏切り行為は、クピピ一族を苦しめた。
クイクル族の攻撃を耐え、封印された力が使えるわけも無く、残された力も使いきり、クピピ族は手も足も出ない状態であった。
あの時、少しでも疑っていれば!
クイクルが、自分達に不利な条件を素直に飲み込む事をどうして疑わなかったのかと、一代目大将は自分を恨んだ。
「ジン・・・」
大将と呼ばれた男の傍らに、小さい幼子。
ジンは、全てを悟っているかのように笑う。
「一代目!!クピピ族の大半やられました!このままでは・・・・・っ、!!」
「これ以上は・・・押さえ切ることが出来ません!」
一代目は悔しさに歯を食い縛った。
「あれを・・・やるしか・・・道は無いのか」
一代目は静かに、静かに目を閉じた。
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