夏戦争
□格闘プリンセス@
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2010年 夏 ――
ワタシにとって忘れられない日々となる
猫 と 兎
YOU LOST!!
「くっそ、今日もダメだったかあ・・・」
見慣れた " LOST " の文字。
ディスプレイにはLOSTの文字と白い兎のアバター。
コイツに挑戦するにも毎回の惨敗で終わっている。
彼はキングカズマ、OMCでチャンピオンの肩書きを背負う強者。
そんな彼に憧れて、OMCを始めてから結構経つけど、未だに一度も勝利を手にする事が無いまま現在に至る。
まあ・・・これでもワタシ、OMCで2位を勤めさせて頂いてます。
回りからは" 格闘プリンセス "なんて呼び名まで貰っちゃって、ねえ。
しかし、自分の中では" 負けプリンセス "だよ。
いや、プリンセスなんて可愛いものじゃないな。
憧れのキングカズマは如何にも格闘系な感じのスタイル。
ゴーグルにハーフグローブ。
これだけでも凄く魅了される。
ワタシのアバターと言えば白猫アバター。
目はブルーでラフな格好。
あまりゴテゴテしているのは好みじゃないので動きやすさを重視した感じにしてみました。
白は、キングカズマにちょっと似せてみちゃったり。へへへ。
「だけど、やっぱり毎回毎回負けると悔しいなあー!」
ふう、とひとつため息をついた私は椅子の背もたれに雪崩れ込む。
「・・・あ、そうだお礼お礼!」
挨拶は礼儀!
勝っても負けても必ずお礼は言う。
勝った事は無いけど!
いいの!これからだから!
見てろよお・・・いつか必ず・・・!
[ 今回も敵いませんでした、流石キング。修行して出直してきます ]
[ いえ、ナイスファイトでした、こちらこそまた宜しくお願い致します ]
ワタシがパタパタとキーボードを鳴らして打ち込めば、直ぐに返事が返ってくる。
流石にタイピングが早い物同士、間が空かない。
一息吐いた所でログアウトしようと思った時、珍しくキングカズマが口を開いた。
[ ララミさん]
[ なんdねしょう ]
キングカズマに話しかけられた事に吃驚してタイピングをしたが、誤字のまま送信してしまう。
「ギャー!恥ずかしいぞ今のおおおおお!!」
そんな私の行動にキングカズマは"キョトン"としたアクションを取ると、赤い目を細めて微笑んだ。
「わ、わわわわわわら、笑った・・・!ヤバ、ワタシ、今物凄くレアなもの見てる・・・なんつー可愛さ! 至福の時!!!・・・あ、っと返事返事!!」
[ 申し訳ないです、タイプミスをしてしまいまして ・・・]
[ いえ、大丈夫ですよ ]
猛烈に恥ずかしい自分。
穴があったらはいりてーよ!!
[ ・・・貴女とは本気の試合をいつかさせて頂きたい ]
[ え、 ]
[ 考えておいてください ]
白い兎はそう残すと空へ消えた。
本気の試合・・・って
いつもワタシは本気でやっているつもりだけど・・・、一体どういうことなんかな・・・
「本気の試合・・・って、」
ワタシはそのまま暫く動けなかった。
キングカズマの残した言葉が気になって仕方なかったんだ。
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