短編

□生きてはならないと呟いた
2ページ/3ページ

まるで子が巣立ったことにより生き甲斐を無くした親のような様子だが、彼女の見た目は高校生だ。肌にはシワもシミも存在しない。

本当に見た目だけは。


「別に死を選ばなくていいだろう」

ペペロンチーノを平らげ、フォークの先で緑をつついてみる。やはり不味そうだ。

「化け物が生きちゃいけない法律でもあるのかよ」

「死を選ばない……?」

俺の言葉に彼女は目を丸くする。赤い瞳はいつ見ても綺麗だと思う。コンプレックスらしく本人には伝えられないが。

「私は人間に害を与えるしか出来ないんだぞ?」

「そんなの個人の主観でしかないだろう。俺は害だけを与えられたと思っていない。美味い飯も食えるしな」

ニイッと笑えば、泣き出しそうな顔をされる。
愛らしい少女の姿を泣かせるなんて罪な男だな、俺。

「……気持ち悪い顔になってるぞ」

「……」

表面上には出さないつもりがにやけていたらしい。咳払いをする。

「どうしても死にたいと言うなら、良い場所を紹介してやろう」

「良い場所?」

インターネットで目にした噂でしかないが、彼女に何らかの影響を与えることにはなるだろう。

それがプラスかマイナスかは分からないが。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ