鼓動は生まれる(仮)

□戸塚明希の証言T
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体育館から出てきた生徒逹のざわつきで、式の終わりを確かめる。
型崩れしないように袋を抱え、旧校舎を後にする。

直ぐに見知った背中を見つけ、挨拶することにした。

「落矢(おちや)センパイ。こんちはッス」

「……戸塚か」

高校生とは思えないくらい煙草を吸う姿が様になっている落矢センパイ。
髪は黒のままで、制服も改造されていないけれど、殴られたら痛そうなゴツい指輪が目立つ。

女子逹からは男前と形容される顔を見上げながら、三つ用意した袋の一つを差し出す。

「いつものおすそわけです。皆さんで食べて下さい」

「いつも悪いな」

「慣れてますから。あと、今日は屋上に誰も近寄らないようにしてくれると有り難いです」

「分かった。うちの奴らにも伝えておく」

一から十まで伝えなくても理解してくれる、この人の頭の良さはスキ。下の人間のこともよく見ているし、管理出来ている。
穏健派なこの人の周りは嫌いじゃない。

「それじゃ、失礼します」

頭を下げ、先を急ぐ。




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