鼓動は生まれる(仮)

□戸塚明希の証言T
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屋上へと上る途中で、新校舎の調理室を覗く。通常授業のない日は鍵は開けられていない。今日も例外なく扉は開かなかった。

ここは先輩の縄張りの一つだけど、鍵が掛かっていれば屋上で寝ている確率が高い。先輩はわざわざ鍵を壊すことも、取りに行くこともしないから。

一歩一歩、屋上に近付く度に気分は向上していく。
春休み中は一度も会えなかったから、先輩の顔を見るのは終業式以来だ。

屋上へと続く扉の前に、紙袋を一つ置いていく。日陰だし、保冷剤も入れてあるから大丈夫だろう。

“勝手に食べていいですが、屋上へは立ち入らないで下さい”

そんな貼り紙を用意してある。今日は先輩とのんびり過ごしたいから、誰にも邪魔はさせない。

準備は整った。


「失礼します」


扉を押し開けた先は、絶景。




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