鼓動は生まれる(仮)
□戸塚明希の証言U
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不機嫌そうな低い声に、私を含めた四人は目を見開く。
「よぉ、こんな所で会うなんて珍しいな」
宮藤……が敬愛する落矢センパイだった。身なりはいつもと変わりないが、目が据わっていて恐い。
夜の街では宮藤達に総長と呼ばれているだけあって、威圧感は半端なものじゃない。
「センパイ、おはようございます」
お互いに名前は出さずに会話をする。ミナミの生徒に名前を知られることを避けるためだ。
「疲れてます?」
「ああ、他所の奴らが夜な夜なやって来て寝不足なんだよ。こういう他校の顔を見るだけで殴りたくなる程度には不機嫌だぜ?」
ギロリと落矢センパイが睨み付けると、三人の肩が震えた。「用事を思い出した」とあからさまな嘘を残して、逃げ去っていく。
「二度と来るんじゃないぞ」と背中に向けて釘を刺すのも忘れない。
これは私でも恐いかも。でも、違和感を感じて笑ってしまう。
「“顔を見るだけで殴りたくなる”って冗談ですよね?」