鼓動は生まれる(仮)

□戸塚明希の証言U
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不良の巣窟である緑ヶ丘の敵は外にもいる。

四月も後半になれば新入生達も落ち着き始める。
暴力という目に見える分かりやすい方法で上下関係を決める生徒達はアクティブだ。このぐらいの時期になれば決着が着いていたり、一時休戦となる。
そこで次に起こるのが他校との喧嘩。血の気の多い野郎共である。

緑ヶ丘高校指定の制服を着ているだけで、絡まれたりするから堪ったもんじゃない。

「可愛いね、お姉さん」
「ケバい感じもないし、何であんな高校に行ってんの?うちに転校してこない?」
「バカ!うちは男子校だろー!」

私を囲んでいるにも関わらず、私を無視して盛り上がっている連中は何なのか。
緑ヶ丘の生徒と似たカラフルな頭を見つめる。黄色、緑、青。
赤とピンクがいれば戦隊ヒーローになれそう。行うことは悪役だけど。

この制服と男子校というキーワードから南波高校と推測する。通称はミナミ。
この近郊には緑ヶ丘、ミナミ、朱藤という三大不良校がある。
同じ高校内ですらまとまりがないのだから、他校との仲なんて勿論険悪だ。交流方法と言えば殴り合い、罵り合い。話し合いなんて穏便な方法はそうそう取られない。
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