闇語り

□禁欲鳥籠
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 君を最初に気になったのは、お気に入りの、普段余り人の来ない旧校舎の片隅で、急に降り出した冷たい雨を仰ぎながら打たれていた時の事。

 灰色の線の帳に閉ざされた視界に、ふと眼に入った、流麗的に踊る君の磁器のような肌を、伝うのは天からの恵みか、はたまた君の眦から溢れ零れたものだったのか。

 俺には、その真意は解らなかったけど、煙る細い雨の中で踊る君の姿は、まるで一枚の絵画のように完成されていたね。


 ……そう、ドガの『踊り子』のような、美しき純白のチュチュを纏い、寸分の狂いもなく踊る少女。


 そんな洗練された風景画を、俺も雨に濡れながら眺めていた。

 だけど、俺が君を見ていたなんて、知るよしもなかっただろうね。

 まさに、名画宜しく、カーテンの端から羨望の眼差しで少女を見詰める醜い男のように――。

 そう……何故なら、君の世界の中に、俺の存在は、登場人物として含まれなかったのだから……。



 だから、無理矢理にでも君の世界に捩込んであげる。


 君が好きだから。

 君に恋焦がれたから。


 だから、俺の鳥籠に永遠に綴じ込めて、君が狂うまで愛でてあげよう。


 そして、俺の為に綺麗な羽根を広げ、踊り狂っていけば良いんだ――。



 
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