novel

□花が咲く時
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練習が終わり、一息つく





(今日は声も良く出たし、気持ち良く歌えたな)





心地好い疲労感を感じながらひとつ伸びをした所で、

ルカが口を開いた





「今日はもう帰る」

「あれ、ルカちん早いね」

「どうせ見たいテレビでもあるんだろ?」

「あ、そーなの?」

「うん」

「今度は何観てるんだ?」

「幕末を生きた男達の生き様を描いたドラマの再放送」

「へぇ〜!」

「だから最近、喋り方が妙に昔っぽいのか…」





みんながワイワイと楽しそうに話しているのを笑顔で見守りながら、私は渇いた喉にミネラルウォーターを流し込んだ







…しばらくして、

公言通りにルカは帰り

リュウも佐藤さんから呼ばれているとの事で、足早にスタジオを後にした



残ったのは、
私とカイとガク





「あー…、腹減ったな」

「だねぇ。たまには飯でも行く?」

「おっ、いいな!」

「よーし決まり!さ、ゆめちゃん行こっ♪」

『え、私もいいの?』

「当ったり前でしょ?何が悲しくて、ガッくんと2人で行かなきゃならないの」

「あのな、それは俺のセリフだっつーの」

「はいはい!ゆめちゃん、何食べよっか?」

「ちょっ、カイ!無視すんな!」





…そんなこんなで、私達は3人で出かける事になった





今日はタイミング良くガクが車で来ていて

私とカイは、ガクの赤色の車に乗り込む





「ガッくんの車に乗るの、久しぶりだな〜♪」

「カイ、お前は汚した前科があるんだから、あんまりベタベタ触んなよ」

「はいはーい」





助手席にカイ

そして、

その後部席に私が乗り込む



車はゆっくりと発進し、
見慣れた景色が流れ…

私達は雑談しながら目的地へと向かった





―…‥





「あっ、ココじゃない?」

『そうみたいだね』

「結構混んでんな…」





ここは以前、雑誌のライターさんから聞いたお店で

個室になってる事もあり、特に業界人に人気がある様だった





「あ!あそこ空いたよ」





満車だった駐車スペースが調度よく空いて

ガクは車をバックで駐車させる為、大きくハンドルを切る





「ちょっと見えずれぇな…なぁカイ、降りて後ろ見ててくれよ」

「ん、オッケ」





カイは車から降りて、車の後ろへ回り指示を出す

ガクはそれを確認する為、肩を抱く様に助手席の後ろへと手を回し、振り返った





(わ…っ!)





ガクの腕が目の前にきて

その細い身体とは裏腹に、鍛えられた逞しい腕につい目を奪われる



筋肉と、
そこに浮き出た血管と、
割と厚みのある掌と、
骨っぽい指先

それに加えて、振り返ったガクの真剣な眼差しに胸が大きく鳴る





(あれ…っ?私、なんだかドキドキしてる…?)





「おい、ゆめ」

『えっ!?あ、なに?』

「何さっきから人の事ジロジロ見てんだよ」









『あ…、』

「ん?なんだよ?」

『な、なんでもない!』






(なに、これ…っ!)





ドクン

ドクン

ドクン





今だかつてない程、心臓が大きく脈を打つ





頭の中で

恋に落ちる音が、した









*END




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