novel

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(またかよ……)



雑誌取材のインタビューを受けながら、俺は今日、何度目かのため息をついていた。


トロイメライが新しいボーカリストを迎え、復活を遂げてから約半年。

最近はメディアの露出も増えてきて、新しいボーカルである優芽の人気も上々だった。

それでも出てくるアイツの名前。




――カレン。




何かといえば優芽に対する質問は、前ボーカリストである花蓮に対しての思いとか、アイツが優芽にとってどんな存在かとか……。

未だに花蓮と優芽の歌や人気を比較するような記事まで出ていたりして……正直ウンザリだ。

きっと俺でさえ そう感じてんだから、優芽本人は、もっと嫌な思いをしてんじゃねえかな。

なんて俺は、いつも優芽の様子を窺っていたりして……

いつの間にか優芽から目が離せなくなっていた。



「カレンさんの跡を引き継がれて、優芽さんご自身はどう感じていらっしゃいますか?」

「私自身、ずっとトロイメライのファンだったので……カレンさんは、ずっと憧れの人でした。ですから、最初は『私なんかでいいのかな』って思いもありましたけど……。でも今は、少しでもカレンさんに追いつけるように、精一杯頑張っていこうと思っています」




こうやって、いつも気丈に振舞ってっけど……知ってんだ。

答えた後、一瞬だけ見せる辛そうな顔。





ほら、今だって――





あの表情を見るたびに、俺は……






優芽が加入した最初の頃は、そんな記者たちに俺が一度キレそうになって……

瑠禾が俺を鋭い視線で一瞥して、それを制したんだっけな。



『優芽のためを思うなら我慢して!』



後でそう言われて……。

いつになったら優芽は、花蓮の影から解放されるんだろう?


今のトロイメライのボーカルは、誰でもない……優芽だ。

俺は、あの歌声に もう一度世界の夢を見て、

そして、コイツとなら叶えられる……

そう思った。



惚れたんだ。

心の底から、優芽の歌声に……。



いや、違うな。

気付いたら、いつだって俺の心の中は優芽でいっぱいで……

いつの間にかアイツのために

俺は、ギターを弾いてた。



優芽の歌声と

俺の音が絡み合う瞬間は、

最高に この胸が熱くなる。





そんなアイツ自身のことを、

俺はきっと……
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