君の声

□introduction
1ページ/2ページ









彼女が歌えなくなってしまったのは、他でもない…きっと、俺たちのせいだ。




あんなに楽しそうに歌っていたのに




「歌う事は、私の生きてる意味…存在してる意味だから」



そう…言っていたのに。




その意味を、




彼女の存在意義を奪ってしまった。




ただ「歌う」事が出来れば


私はそれだけで幸せだよ



それ以上も以下もない



いつかそう言っていた彼女。


どんなに辛くても


歌う事が出来れば笑顔になれる


だから辛い時こそ、歌うんだって



そう言っていた。



だけど、



いつからか、彼女の中で歌う事が苦痛に変わって



それでも、そんな素振りを見せずに歌い続けているから気付けなかった




作られた笑顔




表面に張り付いたような…


まるでお面の様な笑顔




彼女の異変に気付いた時には、もう遅かった





機械のようだ、と誰かが言った




感情も何もない、その声



ただ、歌うだけ



与えられた音に乗せて、与えられた言葉を発するだけ


自分の感情なんかはもう、どこにも無くなっていて






彼女はもう…







「歌う事」が出来なくなっていた







そんなに辛いなら…






いっそ、止めてしまえばいい





歌う事で笑顔になっていた彼女が





歌に笑顔を奪われていく…






「止めたら、私が私である意味が無くなっちゃう」



今にも切れてしまいそうな


細い…細い糸を必死に紡ぎながら


それでも歌い続ける彼女




だんだん、心の悲鳴が大きくなって



ある時、それはいとも簡単に




プツリ、と切れた






歌えなくなった彼女






全てを失ってしまった彼女を目の前に




俺たちは




俺は、何が出来るんだろう?






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ