オリジナル小説

□銀色の騎士物語り
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〜ユーリに会う十日前〜

『旅の途中』に小さな町の近くの森の中に俺はいた。人里には滅多に降りないけれど、唄が聞こえたんだ。

祈りの唄が、優しくて思いが詰まった綺麗な唄。声のする方へ行ってみると、そこは森が割れてドーム状になった中心部にとても小さな池があった。

声の主は小さな池の前で膝をつき、手を胸に当て唄っていた…。

少女だった、たった一人小さな池の前で唄っている−…、その唄に合わせ風が吹き森が唄い池の水は震えている。

「ああ、この唄は祈りの唄だ…」

少女に気付かれない様に木々に紛れて少女の唄を聞いていた。

とても久しく聞いた唄…まだ祈る唄を伝える巫女がいたんだな−…。

「貴方の事をあの少女は知っているのか−…?」

ガサッ−

「気付いていたのか…?」
フライは優しく笑った。寄り添う様について来た気配に悪意は感じられなかった。澄んだ気を感じたからほっといていたのだけれど、今思えばこの気配の持ち主がここへ導いていたのだとわかる。

フライが背にしている木の上から姿を現したのは、深い水の色の眼に、同じ色の髪を靡かせた、このかつて湖であった池の主だった、人の形をしている。世間では魔物と呼ばれたりもする者だ。

こんなにも美しい生き物が何故、魔物と呼ばれるのだろうか?

「あの少女は毎日ここで唄っているよ、我が為に…」

悲しく笑う主、その目は少女に向けられていて優しい。

「ここは昔、森全体を覆う程大きな湖だった、人が町を作る為に埋めたのさ、我の力は弱くなり残された小さな池は日に日に小さくなっていってる」

主の視線は少女に向けられたまま淡々と言葉を紡いでいた。
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