私は誰だ?
□英雄
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「やあ、君」
呼び止められて振り向く。
「私が何か」
それは答えない。
「私が何をしたというんですか」
それが何かを振り上げた。
「そんなものを私に向けるなんて、気が狂っている」
それは去った。
一体何だというんだ。先程からこればかりだ。
得体の知れないものが私を囲んでいる。
恐らくは―――なのだろうか。
「疲れた」
私は小休止を取ることにした。
温かいものを含んで、飲み込む。
一瞬喉が焼けるように熱くなって、体の芯からほんわりと暖かい。
黒い器を飲み干す頃に、日が沈んだ。
私は銃を手に取った。そこに落ちていたからである。
四つ向こうの椅子が揺れた。
「合図だ!」
私は銃を乱射した。
赤が飛び散り、夜空のベテルギウスみたいに円い。
「ははは……」
彼は気が動転してしまったのだろうか。
「狂った」
狂っているのはまた私かも知れない。
神のみぞ知る列車の終着駅にもそれは私の半径十メートルを覆い尽くした。
私は彼の脳天を撃ち抜き、銃を棄てた。