私は誰だ?
□夢
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玄関で誰かが巣を作っているらしく、鉄の扉をかちかちと鳴らす。
困ったことに今は夜も更けて私はすっかり眠かった。
だから、彼女に言ってもらうことにした。
「まあしかし、通じるもんかな」
実際、男と彼女は、不思議な縁があった。
それはあることがなく、あってはならないのだが、また不思議な形式をもって男と彼女はたびたび交わった。
運命線の向こう、交差する時は本来のものではないかもしれぬ。
やがて彼女が帰ってくるに、口元が揺れて霧のように消えてしまった。
私は水の精だと直感した。
ここ数ヶ月、悉く我がアジトの眼前の砂漠を埋め尽くさんとするそれは、今宵も水を撒きつづける。
「君が失くなってしまわないのかね」
それは応えずに、ひたひたともと来たであろう路を帰って行った。
「ふむ」
私は追うことにした。