私は誰だ?
□可能性
1ページ/4ページ
目が覚めると、薄暗い灰色の天井があった。
床からもひんやりとした感触。
おもむろに起き上がると、四方がコンクリート打ちっぱなしの、電球が一つぶら下がった部屋に私は捨てられていた。
捨てられていたというのも、私は全裸であった。
こんな状況なのにそれが堪らなく恥ずかしくなり、思わず手で股間を押さえる。
ふと、ここに来る以前の事が何も思い出せない。
私が何という名前で、どんな顔をしていて、今何歳なのかも。
股間を隠しながら、私は大まじめになって思い出そうとしたが、何も思い出せない。
もしかしたら昨日は酒に酔い潰れて、どこかで頭を打って記憶障害になった挙げ句、どこかの物好きに拉致されたのかも知れない。
はたまた薬を飲まされて、とある凶悪な組織から家族の元に身代金要求が行ってるのかも。
そこで、いや、と思った。
どうやら何も思い出せない割に本能は庶民であるらしい。
有り得るとすれば前者かな、と私は思った。