私は誰だ?
□アルテマと鏡
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古代兵器“アルテマ”―――
かつて最強の生物を創造しようとした人類があった。
戦乱の時代は彼方、昔話へ姿を変えた。
その道楽。
アルテマは悲劇の産物であった。
「完全無欠」
鏡の前に立つ少年もまた、呟いた。
整った顔立ち、すらりと伸びた手足、白い肌。
少年は完璧であった。
優しい性質ゆえに誰からも好感を買った。
その幻想。
あるいは裏切り。
強い光はまた陰影を濃くするもの。
鏡を見据えた、赤みがかった黒目。
呆れるほどに―――
少年はやがて、鏡を割って何処かへ行ってしまった。