私は誰だ?

□英雄
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「何故だ、命を狙われているのかね」

黙れ、黙って私を導けば良いのだ。

「導きを」

そうだ、皆私を助けるべきであった。

私はこんなにも―――なのに、去ったのは誰なのか。

「答えてよ!」

私は声を荒げたが、爺は息をしていなかった。

柱時計がこーん、と鳴って、鳩が飛び出た。

「空か」

山を駆け、その先に丸太小屋がある筈だ。

そこは爆弾のありかでもある。

「危険だが、やるしかないのか」

白い影が迫る。

懐から鋭利な振動を捻り出した。

白く振り上げた。

右を選んだ。

波の音がする。

「ここまでか」

それは囮であった。

白く閃光、振り下ろす。

懐に鋭い振動。

金属の床は焦げ付いた。

「行かなくちゃ」

ここは海。山は遠い。

しかし道はなかった。

私に選択の余地はない。

こんな時でも、思い出すことがある。

木から落ちる夢。

この血は現実であろう。

「!!」

焼夷弾が炸裂する。

空襲である。

けたたましい警報の音。

けたたましい警報の音!

「なんと、他愛のない」

しかし、彼は侮蔑した。

「飯にしよう」

私はやり場のない憤怒に駆られた。

「私の何が分かるものか!」

喀血の勢いで叫ぶ。

丸太小屋には届かなかった。

「見たまえ」

私には関係ない。

「まだ終わっていない」

彼は背を向けた

「後悔するよ」

私はべーっと舌を出した。

もはや一刻の猶予もない。

私は走り出した。
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