私は誰だ?

□英雄
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暗い森をどれほど駆け抜けたであろう。

地面が足を掴むので切り株に腰掛けた。

黒い鳥が二羽、線を描く。

程なく、落ちて食された。

「踊りませんか」

お茶会のようだ。

「結構です、急ぎますので」

彼女は差し出した。

「役に立つものです」

天は左を向いた。

「結構です、急ぎますので」

お茶会は終わった。

だが仕方のないことだ。

私には一刻の猶予も無いのだから。

私は翼を生やした。

「いよいよだ」

もう戻ることはできない。

黒い器と同じ運命。

ならば。

「ならば」

天は右を向いた。

私は跳んだ。

飛翔の速度は白い影を振り切った。

電気が走る。

「ははははは!」

翼が濡れて、軋んだ。

あと二十秒しかない。

雲を抜けた。

飛行機雲である。

爆弾を大量に抱えている。

私の手には果物ナイフ。

銃は無い。

これが運命なのか。

あと十五秒。

焼け爛れた空。

翼は灰で黒くなった。

「私が悪魔か」

あるいは―――かもしれない。

彼は笑っていた。

脳天を撃ち抜かれたままだ。

「やはり狂っている」

それでも、為さねば成らない。

残りは十秒を切った。
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