私は誰だ?
□可能性
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しかし全く、都合の良いときに拉致監禁と記憶喪失が同時に来たもんだ。
私は少々苛立ちながら、股間に当ててない方の手で頭を掻きむしった。
思い出せない事をどうこう考えても仕方がない。
今はこの状況を打破すべく、ゆくゆくは犯人を突き止めるべく動くのが賢明であろう。
しかし、見る限りそこに扉は無く、窓も無く、ただコンクリートの立方体の内壁が広がっているだけ。
中央から黄ばんだ電球が一つ、手を伸ばせば届かなくもない高さでぶら下がっている。
何気なく触ってみようと、手を伸ばした。
ほんわり温かさを感じるそれは白熱電球であることを物語った。
もう少し、と背伸びした体をさらに伸ばすべくよじった。
一瞬電球に触れて、ぶらぶらと揺れた。
かかとを下ろした時、何かを踏んだ。